教育天声人語
レッドオーシャンからブルーオーシャンへ


   名古屋の大手塾の先生が訪ねてきた。首都圏の私学のいろんな学校の話をする中で、
 明星学園や女子美や自由学園のことを話した。すると、「さすが東京ですね。愛知県には
 そうしたタイプの学校はありません」という感想が返ってきた。東京は単に人口が多い
 だけでなく、住んでいる人の価値観が多様だからこうした学校が存在できるのかもしれ
 ない。
  明星学園、女子美は何度か記事を書いているのでよく知っている。決して多数の家庭
 が受験校として選ぶタイプではない。が、2月1日午前の入試。明星学園は97名が出
 願し、97名が受験、受験率100%。合格発表は57名、手続きは56名、手続き率
 98%。女子美は356名が出願し、351名が受験、受験率98.6%。合格発表は
 121名、手続きは118名、手続き率97.5%。
  人数的には多くない。個性的であるからマスが対象ではないが、一定数の固定ファン
 がいる。つまりブルーオーシャンに存在しているということだ。いま多くの学校は似た
 ような教育内容で競い合っている。新しさ、先進的であることを追求し合っている。悪
 いことではない。が、保護者からは「どこに行ってもこれからの時代に必要とされてい
 るスキルの話、スキルアップについて語られる」と聞かされる。似ていることが問題な
 のだ。レッドオーシャンにいて厳しい戦いをしているということになる。同質だからこ
 そ比較されやすく、抜きつ抜かれつという現象も生まれやすい。
  これからの時代を生き抜いていけるスキルは必要だが、それにプラスして、わが校な
 らではのものを打ち出してほしい。首都圏保護者の多様性を生かしていただきたい。そ
 れは、他校の成功例や保護者のニーズといったマーケティングからは生まれないだろう。
 先生方の“思い”“志”を徹底的に極めることからしか生み出せないのではないだろうか

「ビジョナリー」2022年10月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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