教育天声人語
まっさらな舞台


  合同相談会の会場などで知った先生に会うと「今日はどんな質問を受けましたか?」
 と聴くことが多い。すると、多くの先生の口から「入学後落ちこぼれた場合にはどんな
 手を打ってくれるのですか?」「不登校になった時にはどう対応してくれるのです
 か?」・・・といったことが上がる。保護者はどういうわけか入学前から不必要な(可能性
 が低い)心配ばかりしている。この“ネガティブ発想”と“くれる”が曲者である。自
 分でどうこうするよりも、学校に全面的に依存する姿勢である。それなのに学校は「う
 ちは面倒見がいい学校です」などと説明会で話す。私に言わせれば、“火に油を注いでい
 る”ようなもので、順調に行っている場合でも入学後に“説明会と話が違う”“してくれ
 ない”・・・・・・となる。
  「説明会通りの入学者が来る」・・・・・・私の中ではこれはかなり確率の高い標語である。
 コース制を採用し大学合格実績を強調すればこれを第一に期待する保護者が来る。小学
 校時代にシビアな状況だった子どもへの温かな対応を話せば困難を抱えた子どもばかり
 が来る。説明会は学校からの客観的一次情報の提供だけでは差別化されないし、心に届
 かない。で、子育てについての学校の姿勢、生徒にどんな生き方をしてほしいと考えて
 いるか、を語ることこそが大切だと思う。本来これで選んでほしいくらいである。
  そしてもう一つ。心配からくる、過干渉からくる、ネガティブな言動の蓄積に自信を
 無くしている生徒たちに、入学式では、「入学おめでとう。今日皆さんはまっさらな舞台
 に立ちました。〇〇学園は皆さんを白紙の状態でお迎えします」と語っていただきたい。
 塾でのクラスの昇降、模擬試験での合格の可能性、本番での不合格・・・今、大多数の子ど
 もたちには間違いなくエンカレッジが必要だと思うのだ

「ビジョナリー」2021年11月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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