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   生命保険会社やネット企業などいろいろなところが子どもの将来の夢、なりたい職業
  などの調査をする。それらの中に、「『正社員』になりたい」というのを発見し、その子
  の家庭事情を想像してつらくなった。恐らくご両親のどちらか(中には両方かも)が非
  正規雇用で、今回のコロナ禍で雇用止めになったのだろう。こんな切実なことが「夢」
  である社会は発展途上国そのものではないか。
   背景は違うが、大学入試において、地元志向が極めて強くなっている。同じ県内の似
  たような環境で育ってきたものとまた4 年間机を並べる。人生で一番感受性が豊かな時
  代を大きなカルチャーショックを受けずに過ごしてしまう損失
   学校生活もそうだ。ほとんどの行事がなくなり、部活が大幅に縮小され、委員会活動
  もオンラインで簡潔に済まされる現状。友だち関係の濃いというか激しい葛藤も経験し
  ないで済んでしまう学校生活。本来もっと「濃い」はずのものが「薄く」なってしまっ
  ているのではないだろうか。
   この号の本文で小さく扱っている中学入試、高校入試の志望動向から見て取れること
  も、「『心配』が『挑む』に勝ってしまっている」精神の構図である。
   なんか、希望が、精神状態が、もっと言えば社会が、濃い色を失い、委縮する一方の
  ように思える。
   そうした現在、生徒に顔を上げさせ、遠くを見させ、どこかに光を見つけられるよう
  にする―この1 点を見据えることで、コロナ後に、いや今年何をやるか定められるよう
  な気がするのだ。
    
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