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今年もクリスマス献金の案内が届いた。同封されていた教会報の中に、ひとりの牧師
の文章が載っていた。「毎年クリスマスが来ると、子どもたちはキャンドルを持って、
京都の下町を歩き回ります。子どもたちを先導する私のすぐ後ろを、15、16歳くら
いの女の子がついてきました。皆が着飾っている中で、その子はいつもと同じ白のブラ
ウスと青のスカートで、裸足にサンダルした。そしてその日もいつものようにおんぶ紐
で赤ちゃんを背負っていました。『寒ないか?』たずねると、小さなキャンドルに照ら
されて、彼女はにっこり笑って答えるのでした。『寒ないよ』―私にとってのクリスマ
スとは、いつまでたってもその時の彼女の笑顔そのものなのです。」
翌日テレビをつけると、犬の誕生日パーティーを開いているセレブ家庭を取り上げて
いた。カメラが奥にターンすると、六本木のレストランから招いたという白くて長いコ
ック帽をかぶったシェフが犬のために肉を調理していた。シャンパンを手に楽しそうに
談笑する犬仲間の女性たちの姿をテレビは映し続けた。
2020 年まで、元旦の午後にはいつも六本木の事務所に年賀状を取りに行っていた。ち
ょうど1 年前のことだ。当然電車はすいているので、向かい側の若者のつぶやきが耳に
入った。「おせち、食いてぇー」ハッとした。ずっと食べていなのか、今年偶々なのか
はわからないが、元旦でもおせちの卓を囲む環境にない若者がいた。
2020 年はこんな「おせちのつぶやき」から始まり、『寒ないよ』で、あと10 日ほどで
終わろうとしている。コロナ禍の2021 年はどんな1 年になるのだろう。
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