教育天声人語
関心を内から外に

  私(安田)はずっと山手線の内側で育ち(今は横浜に住んでいるが)、就職は出版社で、仕事は編
 集だったので、言語はすべて日本語だけで済み、海外勤務はおろか地方勤務も一度もない。言って
 みれば、極めて同質性の強い世界の中で育ってきたわけである。大学受験のときに関西の国立大学
 に挑んだが失敗。会社時代は定年退職後には地方の心地いい町に1年ずつ住むという夢を描いてい
 たが、それも早期退職して安田教育研究所を始めたので無理に。東京を脱出することに失敗したの
 で、大学時代から長期休みというと旅行してきたし、会社勤務の時代もよくあちこち歩いていた。
  が、旅行はしょせん旅行である。土地に根づいた生活体験とは違う。多様な生活体験は決定的に
 乏しく、それへの劣等感が強くある。それで、少しでも補うべく、今も多様な本を読み、いろいろ
 なシンポジウムに顔を出し、意図的にさまざまな人と会うようにしている。、
  学校の先生も、このことは意識的にしたほうがいいと思う。同じ学校で、同じ教員が、同じよう
 な1年1年を過ごしていて、学校の飛躍的発展は可能なのだろうか。皆が同じ考え方をし、似たよ
 うなことしか言わないで、他校の動きについても無関心、関心はもっぱら狭い範囲の人間関係。そ
 れで果たしてどう変われるのだろうか。
  目の前にものすごく変化の激しい時代が来ている。外に目を向けなければ時代に合った方向性は
 見いだせないし、他校との競争にも勝てない。今や外に目を向けるのは広報担当だけでなく、各教、
 科が「わが教科は市場に合っているのか、他校に勝てているのか」と考える時代になっていると思う
 のだ。
  保護者に選ばれる学校も、これからは時代・世界を意識している学校になるはずである。

「ビジョナリー」2017年2・3月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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