教育天声人語
頼りになるのは「地方出身の女子学生」

  知人の日銀の人が、大学生を集めて「経済指標研究会」という勉強会を行っている。わざわざ学
 外の勉強会に参加しているくらいだから、意識の高い上澄みの学生といっていいだろう。
  先日、属性による活動ぶりの違いについて話を聴いた。組織運営においては、総じて親元から
 通っている学生が頼りにならなくて、地方出身の学生のほうが何かと頼りになるという。とりわ
 け、「母親と仲の良い男子学生」、「父親と仲の良い女子学生」に問題あり。
  前者は、普段母親になんでもやってもらっているので、自分がどう動いたらいいのかという発
 想がなく、自分からアクションを起こそうともしない。またストレス耐性がきわめて低く、厳し
 く接するとすぐ拗ねてしまうので対応に苦慮することがよくあるそうだ。後者は、有能な父親を
 間近に見ているので、協働させても男子学生をバカにしがちなうえ、社会人講師の話も真摯に聴
 こうとしない傾向があるという。
  実は、地方出身者も入学後半年くらいは自宅通学者と大差ないそうだ。が、秋以降になるとキ
 チンとしてくる。日々一人で生活するということは、ささいなことから自分で判断して、行動す
 ることの積み重ねなので、自然と問題発見・解決能力、自発的行動力が身に付いてくるようだ。
  したがって、地方出身の女子学生の比率が高い年次ほど、こちらがあれこれ指示しなくても活
 動がスムーズに流れていくことが多いという。
  親の子への接し方について考えさせられた話だったが、これは同時に学校の生徒への接し方に
 ついても言えることではないだろうか。
  塾対象説明会で懇切丁寧な指導の話を聴くにつけ、学校はいまここでいう「自宅通学者」を大量
 に生産しているように思えてならないのだ。

「ビジョナリー」2015年6月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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