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街中から、車両の窓から見える景色(工場、看板)から『SANYO』の少し斜体がかかった赤い
文字が消えたことを意識している人はどれくらいいるだろう? もちろん家電量販店の店頭から
は3年以上前に三洋電機製品は姿を消しているのだが……。私個人は、ラグビーの強豪・三洋電
機の赤いジャージーがグラウンドから消えたことがショックだった。
『会社が消えた日』(大西康之著・日経BP社)を読むと、最盛期世界中で10万人いた社員のうち、
買収したパナソニックに残れた社員はわずか9000人だったという。あとの9万人余りは、事業ご
とに中国や台湾の企業や国内では京セラなどに売られた。或いは個人的なつてを頼りにさまざま
な職場に散った。
ここまで劇的ではなくても、ある日突然、社長が外国人になったり(武田薬品のように)、他業
種から来たり(サントリーのように)、担当している事業が外国の企業に売られたり、他社との合
弁になったり……といったことは既に頻繁に起こっている。
父親の時代は「入った会社で定年まで」という人がまだ多数派だろうが、子どもの時代は間違い
なく幾度か職場を変わる時代になると思うのだ。終点まで行くまっすぐなレールはもはや存在せ
ず、他のレールとつながったり、交差したり、途中で切断されたり……と、平たんではないと思う。
だから、最近の保護者向け講演では、「お子さんに安全で、清潔で、心地よい、恵まれた環境
を用意しようとするのではなく、嫌いなものでも食べさせる、力仕事をどんどんさせる、知らな
い大人の世界にも参加させる……といったように、肉体的にも精神的にもたくましくなることを
意識的にやっていただきたい」という話をするようにしている。
学校も、順調にいかない、つまずいた、そんなイレギュラーなケースに強い人間に育ててほ
しい。
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