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安田教育研究所のセミナーでも、よその入試報告会でも、中学受験人口の減少は深刻な問題と
して取り上げられている。「人口」であるから、もっぱら「量」の問題として捉えられている。私
自身もセミナーでは、「家庭の経済事情」「公立中学での学習内容の増加」「公立高校の大学合格実
績の回復」といったことが主たる要因という話をする。
が、その一方で、中学受験人口減はこうした外的要因ばかりなのかな? という気持ちがぬぐ
えない。私学の教育自体に魅力がなくなっているという側面もあるのではないか。
つい最近も、会合である私学の先生から、「10年計画で東大合格者を30名にするべく外部コン
サルタントを入れました」という話を聞いた。
4年前ある父親にこんなことを言われた。「その学校を訪れた数時間で何がわかるというのか。
校風で選べとはよく言われるが、これは無責任かつ非科学的だ。客観的な偏差値や大学合格実績
で選択することこそが合理的だ」
今かなりの数の私学がこの父親に合わせてしまっているのではないか。確かに、今の保護者に
とって、偏差値・大学合格実績が学校選択の重要な指標であることは紛れもない現実だ。だから
逆に、各校が敢えて保護者が気がついていない「学校教育が持っている力」をもっと話していかな
ければこの現実は変わらない。学校教育の中身はやせ細るばかりだ。
多様な集団の中で、ぶつかり、もまれ、葛藤し、生徒はどれだけ成長するのか。学校というモ
ラトリアムの時間があってはじめて、「自分は将来どう生きたらいいのか」「自分はどう社会と関
わったらいいのか」……『自己の内側への旅』をする時間が持てるということ。そうした話にもっ
ともっと力を入れていかないと、保護者の学校選択は今後ますます実利一辺倒になってしまうよ
うに思う。
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