教育天声人語
日々の言葉がけがポイント?

  仕事柄、学校改革の相談を受けることがよくある。特に最近は、「生徒の学力をどう伸ばすか」
 が、公立、私立を問わず、どこでも学校の大きな課題になっている。
  先日、ある私立女子校の学力向上プロジェクトチームの先生がいらっしゃった。相談の内容
 をかいつまんで言うと、その学校では高校2年までは予備校等の外部模試の成績が結構いい。そ
 れなのに、いざ高校3年になると、AOや推薦で進学したがり、一般受験で最後まで難関校にチャ
 レンジし続けようという生徒が少ない。学校としては難関大学合格者数が伸びないので、それ
 が学校として喫緊の課題になっているという。いろいろ話し込んでいくと、その学校の先生は
 みな真面目で、「〇〇の部分がまだ不足しているのではないか」「ここを克服しないと××大には
 とても届かないぞ」「△△の国家資格を取るのはそんな簡単なことではないぞ」……と、気がつい
 たことをストレートに指摘していることがわかった。それが生徒を不安にさせ、実力はあるのに、
 早く安心したいとAOや推薦で決めたがることにつながっているように感じた。
  一方、よく知っている学校の中に、高校2年の外部模試では他校に劣っているのに、生徒が一
 般受験で難関大学に積極的にチャレンジする学校がある。その学校を観察していると、先生た
 ちは、「その専攻、あなたに向いているのじゃないかな」「あとひと伸びすれば受かるかもよ
 「潜在的な力はあると思うから挑戦してみたら」……といったように極力生徒の気持ちが前向き
 になるような言い方をしている。
  受験生の保護者に接することも多いのだが、やはり大半の親たちは前者の学校の先生のよう
 にわが子の気になることを次々に指摘している。が、それはあまり効果を生まず、むしろおお
 ざっぱな母親のほうが受験はうまくいったりする。
  この言葉がけは、先生、保護者に共通することではないだろうか。

「ビジョナリー」2013年1月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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