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ある学校の塾対象説明会で、校長が教育理念を語った話の最後に、池田潔の『自由と規律 ─
イギリスの学校生活─ 』(岩波新書)を取り出し、一節を読みだした。池田潔が学んだイギリスの
パブリックスクール、リース・スクールの校長が巣立っていく卒業生に贈った言葉である。
「志を得るもの、然らざるもの、社会が諸君を遇する道は千差万別であろうが、諸君の母校が
諸君を遇する道は常に同じく、大臣、大将、僧正、社長、腰弁、巡査、兵卒、郵便脚夫、いずれ
の諸君をも、歓び迎える校門の広さに差別はない」
その校長は学生時代にこの本に出会い、深く感銘を受け、いつの日か自分が校長という立場に
なったならば、このような教育をしたい、そうした教育ができる学校を作りたいと思ったそうで
ある。、
塾対象説明会でこうした話に出会うことはまずないので、すごく新鮮であった。会の後、校長の
ところに行った。「教育理念の話、リース校の校長の話、とてもよかったですよ」。校長はこう答
えた。「塾説でこういう話をすると浮いてしまうのではないかと、実はすごく心配だったんです」。
そうだろうと思う。無難にやろうと思えば、学校の現状を説明し、成果を語るなど、客観的な
事柄に終始すればいい。個人的な思いや考えを語ることは、一段関係が深まる共感者をつくる一
方で、反発者をつくる危険性を伴うものだ。
が、教育、人生等に関する話ならば、ご自分の過去の経験や思いや考えを思い切って表出して
もいいのではないだろうか。学校の持っている根本的な精神に共感して、校長の話に感銘を受け
て、学校を選ぶ。それこそが私学の学校選びだと思うからだ。
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