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いま、高倉健が6年ぶりに主演した映画「あなたへ」が話題になっている。その高倉健の
エッセイにこんな一節がある。沖縄県石垣島で、ある小・中学校の合同運動会に出くわした。そ
のとき運動会では、おじいさん・おばあさんが藁から縄をなうことを競う種目をやっていた。それ
を見ていた高倉健は、いつの間にか一生懸命手を叩いていたそうである。そのときのことを綴っ
たものだ。
「ぼくの仕事は俳優だから、よくひとから拍手される。でも、拍手されるより、拍手するほうが、
ずっと心がゆたかになる」(『南極のペンギン』集英社)
教え子が有名人になったとか、偉い人間になったとかで、表舞台に引っ張り出される(拍手され
る)こともあるだろうし、先生自身の業績が称賛されることもあるだろう。が、先生という仕事は、
本質的には「拍手する」仕事ではないだろうか。生徒にどれだけ「拍手」できたか、そこに先生と
いう仕事の充実があるように思う。
誰もが拍手すること、誰もが拍手する生徒なら、拍手しなくても構わない。生徒の中には、先
生の懐に飛び込むことが苦手な子もいる。先生に近づくことさえできない子がいる。極力先生の
視野に入らないようにしている子もいる。そうした子にこそ、材料を発見して拍手していただき
たい。
そうした子は、有名人のようには先生の名前を出してはくれないだろう。でも必ず心のどこか
で感謝していると思うのだ。
昨晩TVで何十年ぶりに森昌子の「せんせい」を聴いて<日ごろ偉そうなことを言っていても、
実生活では娯楽番組を見ていることがバレてしまうが>、そんなことを考えた。と同時に、曲
名を「先生」とせず、「 せんせい」にしたのはなぜなのだろうか、とも思ったが……。
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