教育天声人語
御校の「バトンパス」はどうなっていますか?

  今年も多くの学校で校長が交代した。今年はキリスト教系の学校での交代が多いように感じ
 る。プロテスタント系はプロテスタントの世界の中で動くことがあるので、どうしても玉突き
 現象が起きる。次に目立つのが、例年も多い公立高校出身だが、今年は都立中高一貫校の校長
 が私立の中高一貫校の校長になったケースが2校ある。いずれも中高一貫1期生がすばらしい大
 学合格実績を上げた学校からだ。他の私学の校長経験者の起用、以前校長だった人が再登板と
 いう珍しいケースもある。
  もちろん副校長、教頭等の生え抜きがいちばん多い。学校がいろんな面でうまく回っている
 場合は、順送り人事が、業務がスムーズに流れるのでいちばんいいだろう。が、順送りといっ
 ても在任期間が2年、3年で次に交代というのであれば、思い切って1世代飛ばした方がいい。
 実際に、有能な教頭がいながら、敢えて教務主任にバトンタッチした学校がある。貢献に対す
 る処遇は別の形ですればいいのであって、校長人事は個人的事情でなく、あくまで学校の長期
 的な運営という視点で考えるべきだからだ。
  今年はまだ民間企業出身者というケースは耳にしていないが、気になるのは、公立出身者、他
 校出身者を含め、よそから来た人との引き継ぎが十分なされているのかという点だ。前任者が3
 月中旬に学校を離れ、新任が4月1日着任ということでは、文書化しにくい事柄は全く引き継が
 れないことになる。過去に、新任の校長が前任者から全く何も引き継ぎがなかったというケー
 スを聞いたことがある。
  今年退任された校長からいただいたお手紙に、次の一文があった。
  「校長になった時から、トップスピードのうちにバトンパスすることを考えてやってきました。」

「ビジョナリー」2012年5月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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