前号、この号と大学入試の項ではサンデルの『これからの「正義」の話をしよう』を扱っている。
そこで私(安田)もこの本を読んだ。当然のことながら、読みながら頭の中は『学校における「正義」
とは何だろう』の方向へ向かう。
いま学校は、競争が激しくなって、成果を上げるために「何でもあり」の様相を呈している。
・ 偏差値を上げるために正規合格者は定員ギリギリで発表。後はすべて繰り上げ。
・ 生徒の実力に関係なく、学校のイメージのために敢えて難しい教材を採用。
・ 学業不振の生徒をどんどん他校に放出。
・ 少数の学力優秀生に校内の資源(ベテラン教員・施設など)を集中。
・ 落ちこぼれが出ることに目をつぶっての強引な先取り。
・ 学力優秀生に受験料を出して多数の有力大学を受験させる進路指導。
表で裏で語られていることだけでもこの手の話は無数にある。こうした事柄については法令で
ラインが引かれているわけではない。協会の強制力も働かない。要するに個々の学校が「正義」
についてどう判断するかの世界だ。そうしていろいろな場面での個々の判断の積み重ねが、
学校の「品格」を作っていくのだと思う。
先生個々人は、「正義を貫きたい」と思っている人が多いだろう。が、それが可能な状況にある
学校と、それができない学校とがあることもまた厳然たる事実だ。
私自身も、個人的な思いと、仕事としてのコンサルティングで語っていることの間には常に矛
盾がある。が、そうであっても、「正義」について意識していることは必要ではないかと考えている。
先生方も、いつかは正義を貫ける学校にしようという姿勢を持つこと、またそれに向けて努力
することは、やはり必要なことではないだろうか。
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