教育天声人語
一人ひとりが仕事で「誇り」としているものは何か?

  大相撲1月場所を観戦した。その前は蔵前国技館の時代だったからはるか昔の話で、本当に久
 しぶりだった。チケットをくださった方が「特別維持員」だったので、正面最前列の「維持員席」で
 審判長の斜め横というすごい席であった。
 目線の高さが土俵のわずか10cm上くらいだから、向正面の行司・呼出しの一挙一動が常に視
 野に入る。土俵の砂をならす箒に2種類あること、行事の軍配の裏面に漢語を書いたものもあれ
 ば何もないものもあること、制限時間いっぱいで力士が顔をふくタオルが付け人が届ける「MYタ
 オル」であること、懸賞が多くて2回りする場合に旗はどう手渡しされどのような順番で回るのか
 ……きりなくテレビ観戦では気が付かない発見がある。
  永谷園など懸賞をたくさん出している企業があるが、テレビで観ていたときには、懸賞金が1
 本6万円と安いから同じものを何本も出すのだと思っていた。ところが場内アナウンスを聴くと、
 1本1本違うのである。たとえばマクドナルドの場合はこうだ。
  ・「24時間・マクドナルド」
  ・「100%ビーフ・マクドナルド」
  ・「おいしさできたてのマクドナルド」
  これを聴きながら思った。学校・塾も、自分たちの「誇りとするもの」を短く表現してみては
 どうだろう。短いからこそ言わんとすることが明瞭になる。これを全教職員が提出するのだ。そ
 れぞれが、自校の、自塾の何を「誇り」として仕事をしているのか。案外気が付かないでいたこ
 とが上がってきて、新発見があるかもしれない。
  そして、多数の教職員が「誇り」として挙げたものこそ、「共有財産」として伸ばし、外にも発信
 していくものではないだろうか。

「ビジョナリー」2011年2・3月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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