教育天声人語
まず自分の価値観を確立


  「週刊朝日」がこの5 月末をもって休刊になる。40 年くらいも前から時折取材を受け
  てきたので感慨深い。皆さんはご存じないかもしれないが、「週刊読売」というものもあ
  った(途中から「読売ウイークリー」と誌名変更)。この「読売ウイークリー」に『30
  0字の学校ガイド』を書いたことを思い出した。
   関西・九州の学校もあり、「学校案内」ほか広報紙等を送ってもらった(当時はHP は
  なかったように思う)。ある時点から、これらを物理的に見ているのではないことに気づ
  いた。「何について書くか」、「どのフレーズを採用するか」―そうした作業は無意識に自
  分の価値観が行っていた。
   引き受けた時は300字ではとても無理と思っていたが、不思議と書けた。それでも、
  「何について書くか」すぐ決まる学校、いい表現が浮かぶ学校と、とても苦労した学校
  とがある。その違いは、他の学校との差異を明確に持っているかどうかが大きかった。
   保護者から「学校説明会にいろいろ行ったけど、どこもおんなじだった」と言われる
  ことがある。が、私が学校紹介を書く仕事を通じて感じたように、自分の価値観を持っ
  て話を聴けば、わが子、わが家庭に合うか合わないかはよくわかるはずだ。わが子には
  どんな大人になってほしいのか、お子さんの興味・関心、能力・資質について観察して、
  ご両親で十分話し合ってほしい。そうしたわが家なりの価値観が整理できれば、どんな
  学校がいいかも絞られてくるはず。「価値観=ものさし」ができれば、世間的な評価では
  なく、自分なりの測定が出来る。「どこもおんなじ」と感じることもなくなるだろう。
   そして願わくば、お子さんの個人的な幸せではなく、「社会にとってどんな大人である
  ことが望ましいのか」という視点で選んでいただけたらすばらしいと思う。そのほうが
  間違いなくお子さんの幸せにもつながるはずだ。

「ビジョナリー」2023年6月号掲載     |もくじ前に戻る

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