教育天声人語
「校長は偉い」と思わないほうがいい


  今年も多くの学校で校長の交替がある。校長に定年制がある学校もあれば、ない学校
 もあるので、年齢はバラバラだ。今年もっともショックだったのは現職のままご逝去さ
 れたケース。この号に後藤卓也先生が書かれているので読んでいただきたい。
  はなはだ僭越なことであるが、これまで大勢の校長に接してきた経験から、私なりに
 考えていることを、新任の校長にお届けしたい。
 〇中高の校長は中小企業の社長である。先頭に立って動き回らなければ、倒産する。
 〇「校長は偉い」と思わないほうがいい。恥をかかないように、無難に、前任者通り
 に・・・そういう姿勢では、教員の、生徒の、保護者の、外部の人の心をつかめない。
 〇自校の精神的土壌を率先して身につけ、教職員に浸透させる。それが学校を強くする。
 〇校長室に額に入って飾られている歴代の校長のようには貫禄がなくても構わない。む
 しろ教職員、生徒が近寄ってくる親しみやすい校長でありたい。
 〇日常の些事に埋没しない。外の世界を、時流の先を見る時間を必ず作る。
 〇時には、気にしない「鈍感力」も必要である。
 〇学校の状態がよくない時、個人的にも不本意な時もあるだろう。が、暗い顔を、難し
 い顔をしない。人は、暗いところには寄ってこない。明るく楽しいところに集まる。
 〇逆に、暗い顔、辛い顔を見せられる相手、愚痴をこぼせる相手をぜひ作ること。他校
 の校長がいちばんわかり合える。
 〇校長「である」ことには意味がない。何かを「する」ことで存在意義が生まれる。
 〇最後に、健康には十分ご留意いただきたい、体力があってはじめて気力が生まれ、チ
 ャレンジングになれる。

「ビジョナリー」2022年4月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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