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6月16日の日本経済新聞夕刊に「『絶滅危惧』の言語を守れ」という記事があった。
「消滅危機言語」というのは、話者数が減少傾向にあり、近い将来に話されなくなる可
能性が高い言語のことを言うそうである。他言語での教育を強いる同化政策によるほか、
職を得るために自ら主要言語を選択するなどで、少数民族の言語が衰退しつつあるとい
う。
そういえば、ずいぶん前だが、わが国でインターネットが広がり出したころ、新宿の
紀伊國屋ホールで、「インターネットは言語における『アメリカ帝国主義』である」とい
う講演を聴いたことがある。英語が世界共通の言語となり、少数民族の言語が駆逐され
ているという内容だった。当時は、日本でも英語を公用語にしようという動きがあった。
新聞記事は、今回の新型コロナ感染の拡大で先住民の「消滅危機言語」を話すごくわ
ずかな人が亡くなったりするとたちまち消滅しかねない、との指摘である。
つい最近、光塩女子学院で開かれていた「JBBY(日本国際児童図書評議会)世界子ど
もの本展」をのぞいた。60か国、51言語、約200冊の本が並べられていた。本に
は国と言語が記載されている。観ていくと、デンマークでフェロー語、ガーナでハウサ
語、ハイチでクリオール語、オランダでフリジア語、南アフリカでコサ語、スペインで
ガリシア語・・・・・・と、知らない言語が次々と出てくる。それが日本語に翻訳され(それ
らの言語を訳せる日本人がいる!)、本として出版までされているのだから驚きだった。
出版社育ちからすると、「とても採算がとれない」仕事である。
『絶滅危惧』の一方で、遠い国で本になって生き延びているという事実も目にし、言
語というものに改めて関心が向くと同時に、翻訳者の仕事に感心した週であった。
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