教育天声人語
お客さんがいなくなっていませんか?

  富士フイルムの「お正月を写そう」のテレビCMは誰もが目にしているだろう。樹木希林は1980
 年代から大半の年末年始に登場しているが、店長・店員役はいろんな芸能人が演じている。私な
 どは岸本加世子がいちばん印象が強い。調べてみたら、いまは広瀬すずが演じている。
  が、富士フイルムホールディングスの売り上げに占める写真フィルム・デジタルカメラ事業は
 いまでは15%もなく、医薬・医療品、化粧品などの事業が40%にも達するそうである。そういえ
 ば、私が子どもの頃の社名は「富士写真フイルム」だった。フイルムは残しているが、写真はな
 くしている。
  写真のお客さんがいなくなったので、というよりいなくなることが予想されたので(ここが肝
 心)、将来をにらんで会社の事業の方向を変えたのである。それに対してコダック社が連邦破産
 法の申請をするまでに落ち込んだのは、時代の変化に対応できなかったからだと、富士フイルム
 と対比して語られることが多い。私もそう思い込んでいた。ところが最近読んだ本によると、コ、
 ダック社も多角化に踏み出していた。にもかかわらず、反対に遭って多角化戦略から撤退してし
 まったということであった。
  学校についても、長いスパンで見るとお客さんが減少している分野がある。だから、個々の学
 校の問題として解決策を考えても難しい。もちろん逆境の中でもお客さんを集めている学校はあ
 る。が、そうしたケースは例外的なものとしてとらえ、長期的に見ればその分野を保持しつつ別
 の「強み」(会社でいう事業)を作っていくことが必要ではないだろうか。
  もう一つ、学校と接していて感じることは、どこも自分と似たタイプの学校と付き合っている
 ということだ。が、自分とは異質なタイプと接触したときほど参考になることは多いのではな
 いだろうか。「強み」を作るにあたっては、意識的にこうしたことからに行ってはどうだろう。

「ビジョナリー」2018年8・9月号掲載     |もくじ前に戻る

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