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  夏のいただき物にクッキーがあった。添え状に製造・販売元として「伊達カルメル会修道院」の 名が記されていた。これまでも何度もいただいていたが、特に意識しないでいた。今回ビックリ
 したのは、まさにその日の朝、通勤の車内で読んだ本のページにこの名が出ていたからである。
 『小倉昌男 祈りと経営』(森 健著 小学館)。小倉昌男はヤマト宅急便の生みの親である。宅
 急便を始めるとき、役員は全員が反対、従業員もほとんどが反対だった。「離島や山村にまで1個
 1個配達するなんて企業がやることではない。 国(郵便局)の仕事だ」。小倉はこう説得した。「サー
 ビスが先、利益は後。サービスが向上すれば売り上げは付いてくる」。
 実は安田教育研究所を始めたばかりのころ、小倉の自著『経営学』(日経BP社)を読んだ。確た
 る戦略、自信もないままにスタートしただけに、「サービスが先、利益」の精神は仕事の支柱となっ
 た(その後ヤマトは飛躍的に成長したが、安田研は依然としてボランティアにとどまり売り上げ
 につながっていない部分が多いのであるが…)。
 小倉は、世間では運輸行政の規制と闘った闘士というイメージを持たれ、また運送会社の社長
 ということであくが強い人物と思われている。が、本などから受ける印象は、クリスチャンで
 学者に近い。経営者にはキャラクターを前面に出す人物が多いが、小倉は一人間としては個性は
 出さず、仕事で個性を出すタイプである。この点でも見習ってきた。、
 「伊達カルメル会修道院」だが、小倉は系列の「十勝カルメル会修道院」の建築費用として3900
 万円を寄付している。仕事の第一線を退いてからは私財のほとんどを「ヤマト福祉財団」に投じ
 障がい者の自立・社会参加の支援を行っている。
 経営者には関心がない安田が唯一惹かれてきたのが小倉だった。その要因が今回読んだ本の中
 にあった。息子がこう語っている。「父の視点というのは、必ず弱いものに惹かれていました。
 絶対強いものにはいかない。」
 
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