教育天声人語
二軍慣れ

  3月、4月、5月と大勢の校長先生とお会いした。そうした中で、あるとき、他校から現在の学
 校に移って数年のある校長の口からこんな話が出た。「ベテラン教員が手ぶらで帰宅するので、『教
 材を持ち帰らないのですか?』と尋ねたら、『私は仕事は学校にいるうちに済ませます』と返って
 きた。労働時間の厳守とか働き方改革とかが盛んに言われているので、校長からは一段の努力、
 技量向上を要求しにくい。うちのような中堅校だと、授業レベルについて生徒から突き上げられ
 ることがないから、先生たちもマンネリ化して意欲に乏しい。」
  これを聴いて、プロ野球でよく言われている『二軍慣れ』を思い出した。ヤンキースの前田健太
 投手が広島カープに入団した時、先輩から『絶対に二軍慣れするな。二軍に慣れてやっていたら、
 いつまでたっても二軍でしか結果が出ない』と言われ、『すぐに一軍に上がれるよう頑張った』と
 いう趣旨のことを語っていた。
  これからの時代、先生にだっていつ何が起こるかわからない。その学校でしか通用しない実力
 ではやっていけなくなるだろう。それに今は、次期学習指導要領、大学入学共通テスト、ICT
 教育、21 世紀型スキル、ルーブリック評価……次々と新しい要素が加わり、やることは際限が
 ないほどあるはずだ。すべてに関心を持ち、精通することは不可能だ。が、何かしら尖がったも
 のを持った方がいいと思う。「もう自分は50だから」という先生がいらっしゃるかもしれない。が、
 私からすれば50はまだまだ若い。「今から〇〇をしてもモノになるかわからない」「○○を身につ
 けたからって転職できる保証はない」……といった心理が働くかもしれない。が、「損得勘定」
 でなく、新しいことにぶつかってみることをお勧めしたい。やらないでいるより、やる方が充実
 感が持てると思うのだ。

「ビジョナリー」2017年6月号掲載     |もくじ前に戻る

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