教育天声人語
フリーライダー

  それほど一般的ではないが、企業社会では「ネガティブな発言ばかりして、新しい仕事、難し
 い仕事に手を出そうとしない社員」「トップの話をそのまま部下に伝えるだけで、付加価値を生ま
 ない中間管理職」……などを「フリーライダー」と呼ぶことがある。最近、別の使い方を知った。
  3月下旬の土曜日、国連大学内の施設で、「幸福度世界一の子どもたちを育てるフューチャーセッ
 ション」というものがあった。この企画のコーディネーター、パネラーの2名が知り合いだった
 ので参加した。第1部がデンマークの教育についてのパネルディスカッションで、第2部はワーク
 ショップだった。5人くらいのグループに分かれて『幸福度が高いというのはどういう状態だろう』
 といったテーマについて話し合う。
  ふつう初対面同士だと、進行役そのものが譲り合ってなかなか決まらないし、指名されてから
 しか意見を言わない。ところが今回は、「私がリーダー役やります」と、そうそうに立候補する人
 がいるし(女性)、全員(参加者の3分の2は女性)から積極的に意見が出てくる。
  ワークショップ後、失礼ながら「みなさんよくしゃべりますね」と感想を述べた。と、一人の女
 性から「私は海外生活が長かったのですが、海外ではこうした場で自分の意見を言わないと『フ
 リーライダー(無賃乗車)』と言われて、次の会に呼んでもらえません」と言われた。
  これから「グローバル社会」に巣立っていく子どもたちが『フリーライダー』と言われないよう
 にするためには、自分の頭で考え、それを積極的に発言するようにもっていきたいものだ。
  それには、いまから普段の学校生活の中で、極力「あなたはどう思うの?」「あなたの意見を聞
 かせて」・・・とする姿勢が大切だろう。
  と同時に、冒頭のような意味で、先生ご自身も『フリーライダー』にならないようにしていただ
 きたいと思う。

「ビジョナリー」2013年5月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

(c)安田教育研究所 無断複製、転載を禁ず