■キャンパスのもつ教育力
麗澤のキャンパスは広い。雑木林、芝生の広場が点在する46万F(東京ドーム約10個分)の敷地には、リス、ウサギ、フクロウといった動物までが生息している。また、幼稚園児から大学生、留学生、社会人、近隣の人までが日常的に行き交う。
広いから、門から校舎までも結構ある。毎朝道々、警備員や掃除をしている職員に挨拶しながら校舎に向かう。その数分間が、心を穏やかに、純粋にする。昼食は全員が中央食堂で摂る(中1は全員が同じものを食べる)。作り手への「感謝」と「マナー」と「残さない姿勢」を身につける。教員から食堂・売店の職員まで、学校関係者全員が一様に生徒を育てることに力を尽くしている。
■「心のカレンダー」をめくる
麗澤は、モラロジー(道徳科学)を唱えた創立者・法学博士廣池千九郎が開設した私塾が発祥である。そうした沿革から、何よりも道徳=「心の力」を育てることを大切にする。「感謝の心・思いやりの心・自立の心」の3つである。
道徳の授業以外にも、朝のショートホームルームでは、「心のカレンダー」(創立者が世界の四聖人の教えから導き出した31の格言が書かれた短冊)をめくる。一例を挙げるならば、「一つの念いも一つの行いも仁恕を本となす」「天爵を修めて人爵これに従う」……といったようなものである。日常生活ではおよそ使わない語句だが、語調がいいのでいつの間にかみな頭に入ってしまう。「道徳なんて」とそっぽを向いていた生徒も、卒業時には「心について」「人間について」「人生について」考える時間をもてたことを感謝するという。
■ すべての教科のベースになる「言語技術教育」
これからは外国人とつき合う機会がいやおうなしに増加する。そのときネックとなるのが、論理的に語ったり、書いたりするのが不得手なこと。そうしたことから始まったのが、「言語技術科」という独自の教科。対話力、説明力、論証力、分析力、論理的思考力、批判的思考力など、自立して生きていくために必要な能力を育成しようというものである。「言語技術科」の授業は1週2時間を通して行われ、「問答ゲーム」から始まる。「意見をいうときには必ず理由をつける」「主語と目的語を落とさない」など、日ごろ見落としがちな部分に気をつけさせる。
こうした「言語技術科」の手法を他のすべての教科にもいかしている。これらは単なる技術・技法ではない。しっかりした「道徳性」に裏打ちされている点が麗澤の麗澤らしいところである。
麗澤の真価は、人とともに生きられる、これから到来する国際社会で外国人とも共生できる「心の力」も持った人間をしっかり創っているところにあるのである。
(「学研くるみの木Vol1掲載)
麗澤中学校HP
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