法政大学中学高等学校 | 東京都 | 共学校 |
はじめに、学校長の挨拶がありました。
- 井の頭公園の南、玉川上水沿いの自然環境抜群のこの地に、2年前の2007年4月、移転してきた。移転と同時に、新しい教育改革に打って出た。男女共学化と、付属校としての新しい価値づくりである。
- それまでの本校(男子校)の生徒は、服装は生徒の自主性にまかせて自由。進学は法政大学にエスカレーター式に行けて安心というものであった。一面では、生徒は個性を存分に発揮していたと言える。しかし、大学に入るだけなら公立でもいいのではないか、付属校としての存在価値をどう示していくのか、等の見直しを行い、新しい法政への一歩を踏み出すことにした。ほぼ同時に制服も導入した。
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大学付属校としての「新しい価値」の創出とは・・・・・・。
(1)学習面で高い水準の学力をつけること。これまでのイメージとはまったく違う、大きくガラッと変わった点である。ステップを踏んで、着実に総合的な基礎力をつけていく。
もう1つは、
(2)キャリア・クリエーション。大学進学がゴールではない。その先を見据えて、なりたい自分をプロデュースできる力を育てることである。
- 今年3月、240名の卒業生を送り出した。そのうち、法政大学に進学(内部進学)した生徒は206名(86%)。21名が早稲田、慶應、上智、中央、明治等に進学した。
- 内部進学は高3の12月に決まる。それから3月までの3ヶ月間、希望者は、大学で学びたいことに取り組むことが出来る(プレ・リサーチ・プロジェクト)。いろんな人に会って取材したり、資料を集めたりして論文にまとめる。今年の論文には、「死刑制度の是非について」「格差との闘い」「いかにして外国人に日本らしさを伝えていくか」等々があった。これこそ、総合的な基礎力の発揮と自負している。
- 先週の土曜日に、全校生で「六大学野球」の応援に行った。対立教戦だった。1点リードしていた9回裏、サヨナラ負けをくらってしまった。生徒たちは茫然自失。勝負の厳しさを知った。同じ応援席に、本校をよく知る人達がいた。「校長先生、生徒が変わりましたね」と声をかけられた。制服をきちんと着た生徒の応援ぶりに、法政のカラーが変わってきたと感じ取ってくれたようだ。
次に、教務部長から、教育内容について説明がありました。
- 教育内容を簡単に言うと、10年先、20年先の自分を強くするために力をつける、ことである。中1・中2の「ファーストステップ」は基礎力の獲得、中3・高1の「セカンドステップ」は多様な方向性の模索、高2の「高度教育プログラム1」と高3の「高度教育プログラム2」では自分を伸ばすために必要な学習のスタートに取り組む。
- 本校の英語教育の目標は、「英語力と国際性」「コミュニケーション能力」「豊かな感性」を育てることにある。具体的には、英文内容を正確に読み取り、その内容に関する批評文を200語〜300語で書けるようになることをゴール目標に置く。ふだんの授業、1週間の授業、1学期の授業、年間の授業・・・・・・全てゴールを明確に意識している。
- 昔、こんなことがあった。「英語なんていらない」と言って、生徒がまじめに授業を聞かない。あるとき、海外プログラムで海外研修に行った。すると、英語に目を輝かせてくいついているではないか。日本での授業中の態度とはまったく違う。ならば、ふだんの授業でも出来ないかと考えて、英語を実際に使う場面を想定して授業をすることにした。たとえば、「海外からメールが来ました。どう、返事を書きますか?」といったように・・・・・・。今は生徒参加型の授業を展開している。
- 他教科でも、学び、発表し、考えてまとめる授業を行っている。
私の感想
本校を取り巻く入試環境は厳しいとの認識を何度か聞きました。そんななかで、法政大学中学高校は新しい価値づくりに全校一丸となって取り組んでいました。3年目にして、「新しい法政カラー」が周囲にも定着してきているようです。
新しい法政づくりにあたって、「目標を立てる」→「目標を意識した日々の実践」→「その評価と新たな課題への取り組み」のサイクルが回っているな、と感じました。
終了後、校内見学に参加してみました。図書室で新中1生の1クラスが調べ学習に必要な本の探し方について説明を受けていました。入学してまだ2週間、それぞれが緊張した面持ちで聞き入っていました。校舎は新しく、どの教室の窓からも緑が目に入る設計とか。学校全体がまぶしい新緑に包まれていました。
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