東洋女子高等学校 | 東京都 | 女子校 |
はじめに学校長より挨拶と「教育活動について」の話がありました。
- 本校はこれまで知名度が低い学校だったが、昨今、皆様に目を向けてもらえる学校になった。進学に関する実績が出てきている。
-
男子校や女子校から共学校に変わっていく学校が多いなかで、本校は明治の頃から一貫して女子教育に努めてきた。女子と男子では、物事の興味づけに違いがあり、性差がある。女子には女子の教え方がある。本校の教育目標は自立した女性を育てることである。将来、自分の意志で人生を切り拓いていける女性を育成していきたい。
教育の基盤は、社会性を身につけさせること。3年間、基本的生活習慣の確立をはかっていく。マナー・思いやり・躾をきちんと指導していきたい。 - そのうえで、進路指導に力を入れる。生徒一人ひとりの将来をいかに目に見える形にしていくか、直近のハードルである受験をどうクリアしていくか、に力を注ぎたい。
-
教科指導は、授業が主体となる。「指定校推薦から脱却」して「真の学力」の定着をはかる。特進コースの全員にセンター試験を受けることを義務づけている。1 年次から授業を計画的に組み、生徒の学力を高めている。
特に力を入れていることに全校生徒の「家庭学習の把握」がある。毎日、家庭での学習状況を「学習の記録シート」に記入させる。生徒は予習・復習や宿題についてやった内容や時間を書き入れ、翌日、担任がチェックしてアドバイスする。生徒と担任の交換日記のようなものだ。効果が出てきた。高1 の家庭学習時間が増えてきた。他にも多くの施策を行っているが、うまくいくためには全教員が同じ目的意識をもってやりぬくことが大事である。 - 大学進学について報告したい。四年制大学合格率は年々上がり、82%を達成した。一般受験合格率(のべ数)も、指定校推薦に頼っていた時代に比べ飛躍的に高まり、73%とはじめて70%を超えた。国公立および私立難関大学合格数(昨年→今年)では、国公立大(0 →7)、早慶上智理大(0 → 5)、G − MARCH(2 → 13)と、飛躍的に伸長できた。
続いて、「実践報告」が、特進コース担任よりありました。
-
いかにモチベーションを維持しながら指導したかを報告したい。
特進の使命とは何か。難関大学に一般受験で進学するクラスである。入学当初はモチベーションが高い。が、だんだん下がってくる。そこで、モチベーションが下がらないように、生徒に徹底して言い続けたことがある。「一般受験して、自分の力で合格を勝ち取ろう。上を目ざして頑張れ」。 - いくら生徒本人に言っても、心弱い部分もある。そこで、家庭を巻き込んで対応していった。保護者会がある。1・2年次は夏までに2回の3者面談がある。生徒本人の考えを聞き、家庭とのズレを話し合っていった。どうしても来られない家庭にはアンケートを配付して2者面談をし、ことこまかに進路を考えさせていった。3年次の3者面談では、保護者にも受験に関わってもらい、家族も子どもと一緒に受験を考えてもらうことにした。こうして親・子・教師のタッグで徹底していった。
- 1週間の家庭学習時間の目標は、高1が21時間、高2が27時間、高3が35時間である。「学習の記録シート」を見れば、復習内容や予習内容が一目でわかる。バランスよく学習できているかが見えて効果があった。
- 次に、メンタル面の指導も重視した。受験は、やたら受けても合格できるものではない。また、年によって入りやすかったり、入りにくかったりする。偏差値にごまかされないようにした。いちばん成功したのは、その子の適性と入試問題の適性を調べさせたこと。その生徒に合った問題、合わない問題があり、受験教科について自分で調べさせ対策を立てさせた。こうして、センター試験を利用して波に乗った生徒もいた。また、出願してただ受けるのではなく、「なぜ受けようと思ったのか、理由をはっきり」させた。先生に言われたから、ではモチベーションが低い。志望理由書やシミュレーションシートの作成を通して、モチベーションを高く維持したまま受験させるようにした。
- そして、「しだいに突き放す」ようにした。甘やかしていてはよくない。担任から他の先生に意見を求め、その生徒にマッチした指導を加味し、最終的に本人と担任の調整で受験校を決定していった。ランクアップ、ランクダウンもあったが、みな納得して受験に臨んだ。
次に、「来年度入試要項」、「生徒募集」について説明があり、終了しました。
私の感想
東洋女子高校は今年、大学進学面で大きく躍進しました。今日は、その指導方法について丁寧な説明がありました。取り組みは実によく考え抜かれており、実践されています。なかでも、「学習の記録シート」やモチベーション指導がキーになっているようで感心しました。
高2 の古文の授業を見学しました。黒板には白チョークで短い古文がたくさん書いてあり、生徒がそれぞれ分担して、黄色のチョークで現代語訳を書いていました。「あるいは去年焼けて今年作れり」の古文には、生徒の「あるいは去年焼けて今年作った」がありました。その後、みんなで答えを検討していくことに。教師から「あるいは」を調べましたか? の問いに、すかさず生徒から「あるものは」ではないですか、の声が上がり、「ある家は」ではないのかと授業は進んでいきました。生徒達は板書に立ったり、電子辞書で調べたり、考えたり……飽きさせない授業が展開していました。
(c)安田教育研究所 無断複製、転載を禁ず