教育天声人語
「大衆の反逆」と「かのように」


  お誘いを受け、「アスペン・ジュニア・セミナー」を覗きに行った。高2生を対象に年3回開かれ
 ている。今回は最終回。人数はA・B・Cの3つのグループに分かれ、それぞれ20名程度だから
 計60名規模の小さなセミナーだ。私はBグループのオブザーバーとして末席で拝聴(もうお一人
 は武蔵の杉山剛士校長)。
  テキストはオルテガの「大衆の反逆」と森鴎外の「かのように」。恐らくアスペンに参加しなけれ
 ば、読むことはもちろん触れることもなかったであろう作品。難解で、私でもスムーズに読めない。
  対話は、発言者が「〇ページ〇行目にあるように」と示すことから始まる。驚いたことに発言が
 途切れる空白の時間がない。深く読み込んできていて、私が気が付いていない指摘が次々と上が
 る。「大衆の反逆」の中の一文『社会を大衆とすぐれた少数派に分けるのは、社会階級の区分では
 なく、人間の区分であって、上層、下層の階層序列とは一致するはずがない』では、現代に置き
 換え、自分自身の立ち位置にまで言及した発言も…。
  仕事柄、どこの学校の生徒が参加しているのか気になった。休憩時間に世話をしているアスペ
 ンのマネージャーに尋ねた。縁のある学校に案内し、校内選考を経て応募してくるとのこと(先
 生に勧められて、ポスターを見て、が多い)。個人情報で名簿はもらえなかったが、見せてくれた。
 Bグループの名簿には市川、光塩女子学院、品川女子学院、自由学園、広尾学園、武蔵……など、
 なじみの校名が並んでいた。
  最後のクロージング合同セッションでは各チームから男女一人ずつが3回を通じての感想など
 を発表。ここでは校名が名乗られた。早稲田高等学院、明大明治、県立浦和、洗足学園、都立日
 比谷、開智。なんとなくの印象であるが、校風がアグレッシブな学校が多い。
 これからの時代、学校も生徒もチャレンジングでありたい。

「ビジョナリー」2020年2・3月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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