教育天声人語
これからの私学の校長は多様な力量を求められる

  3月。今年も親しい校長が何人か交替される。退職される方の中には私よりご高齢の方もいらっ
 しゃるが、就任される方は皆私よりずっと若い。ご挨拶にいらっしゃれば、つい偉そうにアドバイ
 スじみたことが口に出る。話をしながら、内心では「これからの私学の校長は大変だぞ」と思って
 いる。
  元野球選手の桑田真澄氏が、プロ野球の監督についてこんなことを言っている。「以前の監督は
 勝つことだけに徹していられた。が今は、優勝だけでなく、選手の育成も、ファンサービスも、メ
 ディア対応も、すべてが求められる」
  これを聴いて、私学の校長もまったく同じだと思った。学校のイメージアップ、募集定員以上
 の入学者を確保すること、偏差値を上げること、大学合格実績を向上させること、生徒・先生の、
 事故(不祥事)の際のマスコミ対応、顧客対応(在校生・保護者)、同窓会へのアプローチ、塾(業界)
 との付き合い、私学協会のメンバーとして……それこそ多方面との多様なやり取りが求められる。
 いろんな資質・才能が必要になっている。
  今年、セ・リーグの監督は皆40代になった。私が子どもの頃の三原、水原、もっと後の西本
 仰木……らの監督たちと比べれば、威厳も、貫録も、勝負師としての厳しさも感じられない。が、
 若く、明るく、親しみやすく、選手との距離が近い。、
  恐らく30代、40代の保護者が校長に求めるものは、威厳や貫録ではなく、親しみやすく、生徒
 との距離の近さではないだろうか。「前任校長のようにはできないのではないか」そうした不安を
 持つのは当然だ。が、前任者と違っていいのだ。組織というものは、新陳代謝を図らなければ淀
 んでしまう。若さとしなやかな柔軟性を武器に、激職に果敢にチャレンジしてほしいと思う。

「ビジョナリー」2016年4月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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