教育春秋
地方の高校の頑張り
 この夏休み、私は奥只見に出かけた。
 奥只見は路線バスがなく、上越新幹線の浦佐でレンタカーを借りるしか手がない。浦佐にはニッポンレンタカーやトヨタレンタカーといった大手は出ていず、地元の小さな会社が「これをお金を取って貸すの?」と思わず口に出しそうになった、あちこち塗装がはげた車を貸してくれた。走ると、不気味な音がし続けているのは参ったが……。国道・県道を走っていると、頭上の歩道橋が、左右の道端のバス停が、トタン板の家がまっ茶色に錆びついていて、いま地方が疲弊していることを実感させられた。

 2日目の夕方、レンタカーを返して駅に戻り、新幹線を待つ間、待合室に入ってビックリ。大勢の高校生が参考書やノートを開いている。「そうだ、ここには国際情報高校があるのだ」と気づいた。この学校は、当時全国でも最下位に近かった新潟県の大学進学率を上昇させることを目的に1992年に設立。そのため全県から生徒が集められるよう専門学科の高校として誕生。ハードなカリキュラムであること、毎年卒業生の半数以上が国公立大学に進むことなどで、存在自体は知っていた。
 私が隣に座ったことなどまるで意に介さずに集中している姿を見て、最近地方の高校の大学合格実績が向上しているバックボーンのようなものを感じた。

 日常から離れると、普段より感性がはるかに鋭敏になるように感じる。学校が、生徒にいろんな出会いの機会を用意しているのも、こうしたことなんだなと思った次第である。

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「安田研通信」2010年8月号

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