富士見中学高等学校 東京都 女子校

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 はじめに校長より、富士見の全体的な話がありました。

  • 創立以来、建学の精神「純真・勤勉・着実」を土台にしながら自立した女性を育ててきた。来年、本校は70周年を迎える。これまで以上に改革をはかりながら、新しい学校をつくっていきたい。
  • どんな学校か……。学校というのは、生徒が明るく元気で、夢や希望をかなえるため目標に向かってみんなで励ましあい挑戦できるところ、成功をみんなで喜び合えるところだと思う。中学高校時代は、子どもたちは多感で、無限の吸収力を持っている。人間的成長をはかることで、社会貢献のできる自立した女性を育成していきたい。
  • 本校の現状を知っていただきたい。ここに映したのは体育祭最後にみんなで校歌を歌っているショットだ。自然と輪ができ、肩を組んで校歌を歌う。この輪が、6年前から年々大きくなってきた。6年前といえば、選抜の特進クラスを廃止し、フラットなクラス編成にした年である。こうして見ると、改革が子どもたちの表情をつくっていくんだなあ、としみじみ思う。文化祭オープニングのスナップ写真もある。実行委員会からの申し入れで、挨拶の前に校長もパフォーマンスを1つすることになった。それで、生徒たちが作ってくれた衣装を着て、こんな格好になった。このように、生徒と教員はたえず協力しあい、学校環境づくりでまとまっている。
  • 教育の基本的なワク組みについて説明したい。中高6か年で2つの“柱”を実現していく。「進路希望の実現」と「豊かな人間性の育成」である。それには、3つの分野「進路指導」「学習指導」「行事・クラブ」が大事となる。
     「進路指導」で心がけていることは、将来、自分はどう生きていくのかを考え、その実現のための大学選びをさせていくこと。自分を知り、社会を知り、社会人や大学の先生の話を聞きながら、自分を見つめていく。あわてないでいいと言っている。
     「学習指導」では、生徒の興味・関心を引き出し、基礎学力を培い、進路に見合った実力を身につけさせること。その大前提として注意していることは、家庭での3大時間の固定である。「起きる時間」「家庭学習の時間」「寝る時間」を定時化することである。自学自習の習慣づくりに力を入れている。学力の伸びは、習ったことをきちんと消化できるかどうかで決まる。まず学校を中心とした学習があって、その上で家庭学習が大事となる。本校は、さまざまな講習・補習も整えている。夏期講習、放課後講習、補習などで、きめ細かくサポートする。
     「進路指導」「学習指導」がクルマの両輪とすれば、そのエネルギーとなるのが「行事・クラブ」だ。生徒が自主的に取り組み、さまざまな挑戦への力を養成できる。そのことを通じて、心の成長を遂げるのが大事である。
  • 中高の6年間、これらがしっかり機能するように、効果あるものになるように、改革を積み上げてきた。生徒を大きく変えた改革としては、先にも触れた6年前に特進クラスをなくしたことが大きかった。生徒たちは明るく元気になった。一人ひとりが、意欲的、積極的になり、学校の雰囲気が出来上がってきた。本校は勉強だけをやっている学校ではない。こうしたことは高校だけでなく中学も変えた。ギクシャクした人間関係がなくなってきた。高校に行っても互いに頑張ろうといった気風が生まれてきた。
  • その結果を図で示そう。6年間の進学実績が右肩上がりになったのである。G −MARCH 以上の大学に合格した数は、2004年度が54.3%だったが、2009年度には125.8%にまで伸びたのである。中学入学時の偏差値で子どもは測れない。頑張る環境が与えられれば、生徒は自分で伸びていくことができる。
  • これまでの改革は改革の第1ステージだ。これからが第2ステージである。今まで以上に子ども達の人間力をパワーアップさせることが大切と考えている。学校の経営計画をまとめる際、中期目標、今年度目標を立てた。「生徒は学校生活の主体者」と位置づけた。具体的には、中学の道徳とHRを連携させて、子どもの成長をはかっていく。さらに、70周年を迎える来年度から、これまでの週33時間授業に1時間増やして、週34時間授業体制とする。次に、中高一貫体制を充実させる。
     三好邦雄の本に「子どもの7つの宝」という表現がある。「好奇心が旺盛である」「精神が安定している」「エネルギーに溢れている」「柔軟で広い価値観をもっている」「自分に満足することからくる良いプライドをもっている」「友だちの中で社会性が育っている」「感性が豊かである」である。1つでも欠けては子どもは躓いたりゆがんだりする。
  • 今後の基本方針は3つ。(1)「現場主義・生徒主義」、(2)「失敗させる教育」頑張れば実現できる課題に挑戦させたい。失敗しても、失敗と向き合うことで自分の殻を破っていける。(3)「安心感と居心地の良さ」が学校にないといけない。
  • 成人式のスナップ写真がある。6年前ぐらいから成人式を迎えた卒業生が本校に集まるようになった。年々増え、最近では在籍数の半分以上が集まってくる。元担任と話したり、記念写真を撮ったりしている。母校を第2の誕生の場と思っていただけているようだ。生徒と教員一緒になって学び合っていきたい。

 次に、「富士見の教育」と題して、中学教頭の説明がありました。

  • 中学では、子どものやる気にスイッチを入れる。モチベーションを上げる。具体的にやっていることは、入学してすぐに「宿泊オリエンテーション」がある。安心できる居場所が見つかりスムーズに中学生活がスタートできる。「グループワーク」がある。これは自己肯定感を高めるゲームだ。「コミュニケーション学習」がある。コミュニケーションにはスキルが必要。専門家に担当してもらう。「発表授業」では、発表する場面をつくる。小さな成功体験を話す場である。「総務役員選挙」では、先輩達のいきいき頑張っている様子を見て、自分もと思う。「合唱大会」がある。中学生にとってプレッシャーの場面であり、成長の場でもある。「中3卒業研究発表」では、少しだけ学問をかじることで興味・関心をもつ。「高3生からのアドバイス」では、受験を終えた高3生がクラスに来てくれて、生き方や将来の設計図を話してくれる。それを聞いた中2生は夢を描き始める。「大学生によるシンポジウム」を聞いて、中学生は自分の道筋を少しだけ思い描くことに。「体育祭」は、なにより生徒にやる気を起こす……。
  • 今週は「面談ウィーク」である。各クラスで担任が個人面談をする。起床時間、就寝時間、朝食を摂っているか、など家庭生活のことが主。「起きる・寝る・勉強を始める」時間の3点固定が大切である。3点が固定されないと伸びないからだ。本校の生徒の平均は、帰宅時間が18:10、就寝時間は23:13である。その間は5時間しかない。なお、家庭学習の時間の長さと成績とは相関関係はない。伸びる生徒は、すぐ答えを見るのではなく、自分で解くことを目ざしている生徒である。生活レベルにまで入ってアドバイスしていけたらと考えている。

 最後に、「2009年大学進学実績」と「2010年入学試験」について、入試広報部から説明があり、終了しました。説明の中で、6年前の改革で特進クラスを廃止したことが生徒のやる気につながったことに関して、つっこんだ話が聞けました。

  • 担任していて、クラスの雰囲気が改革以前と後では全く違った。特進クラスに入れなかった生徒はやる気が出ない。ところがフラットな形に改革した後では、上位層に引っ張られて中位層が頑張り始めた。さらに、中位層に引っ張られて下位層まで頑張るようになっていった。さらに体育祭等でも「皆で頑張ろう!」の気運が高まっていった。みるみる学校全体が明るく元気に変わっていった。

私の感想

 終了後、校内見学に参加することに。図書館に入るとすぐに、中3生による「卒業自由研究論文」のファイルが閲覧できるように並んでいました。中2生が参考に見られるようにとの配慮です。パラッとめくると、たまたま「人はなぜ笑うのか」、「黄砂について」の論文が目にとまりました。中3生にしてはしっかり書かれていて感心しました。
 中1のあるクラスをのぞいたときのこと。国語の接続詞の授業でしょうか、楽しそうでした。先生が黒板に、「チョコレートはおいしい」「たくさん食べると虫歯になる」と2行書き、読み上げたとたん、すかさず生徒から「歯磨きすればいいじゃん!」と明るい声が上がりました。こんなふうにクラス全体がとっても元気で明るいのです。この授業は先生と生徒の双方向で進んでいる感じです。“生徒は学校生活を楽しんでいる”、“とても楽しく学んでいる”そんな感じが敏々に伝わってきました。校長が話していた明るく元気な学校づくりのほんの一端を感じとることができたように思います。

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