安田の目

■ Mail Magazine《学研/首都圏中学受験ニュース》連載
『中学受験 安田の目』第41回〜60回

 

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 ∩   《連載/第60回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
 受験が2か月に迫ったこの時期にも、志望校をまだはっきり決められない
親がいるという。入ってくる情報が多すぎて、何がなんだか決められない?
周りの人に相談しても、さらに迷いが……。安田先生からのキツーい一言。
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    ■ 受験校がまだ決まらない!
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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┃11┃月下旬、東京の多摩で、お母さん方の小さな集まりに招かれました。
┗━┛主なテーマは受験相談です。
 
 その中のおひとりが、いまだに第一志望すら決まらないで、大変焦ってい
ました。お話を聞くと、共学の付属校や女子の進学校・・・・・・いろんなタイプ
の校名が挙がってきました。お子さん本人も「どちらでもいい」と言ってい
るというのです。

 最近はこの例のように、いつまでも受験校が決まらないでいるケースが少
なくありません。

 お子さんの成績が安定しないからということもありますが、こういうお母
さんは、わが子にはどういう学校がふさわしいのか、自分ではどういう学校
が望ましいと思っているのか・・・・・・そうしたことがハッキリしていないこと
が多いのです。

 自分の考え・意思がないままに、いろんなタイプの学校を訪問して、ます
ます選択の根拠がわからなくなって泥沼に陥っている、そんな様子です。

 こんなときに、塾トモのお母さんから、あれこれ学校の情報を仕入れても
解決するものではありません。

┏━┓
┃む┃しろ、自分ひとりの時間をもち(夫が受験に協力的なら話し合いの時
┗━┛間をつくり)、「何を望んで中学受験するのか」、「わが子をどう育
てたいのか」・・・・・・といったことを、冷静に自分の頭で考えてみてください。

 わが子をどんな学校に進ませるか、その判断の根拠は、学校から提供され
る情報にあるのではなく、ご自分(ご家庭)が「わが子をどのように育てた
いのか」というこちら側の姿勢にあるということを肝に銘じてください。

 それをしっかり持っていないから、「○○中は      ,−−、 
最近伸びているそうよ」「△△学園のほうが2ポ      /      \
イントも偏差値が高いわよ」・・・・・・といった外野      V・  ・V
の声を耳にするたびにぐらついてしまうのです。    ω人=♀=ノω      
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(2009年12月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第59回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
 中学受験には、親も子もさまざまなストレスがかかります。子どもの将来
と幸せを願って始めたはずなのに、家族内のあらぬトラブルに発展したり、
子どもの心をゆがめる結果になったりすることも。そんな「わるい受験」に
陥らないで「いい受験」とするためには……安田先生からのアドバイス。
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    ■ 「いい受験」「わるい受験」
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃先┃日、ある育児情報誌で、私立中学の先生4人と、「『いい受験』『わ
┗━┛るい受験』」というテーマで座談会を持ちました。

 私立中学の先生がもっとも気にされていることのひとつが、「勉強ができ
ることだけに価値を置いて育ってきている」ということです。定期試験で、
カンニングしたり、答案返却後に答案用紙を改ざんして持ってきたりする生
徒がいるそうですが、それは成績が悪いとしかられるという生活をずっと送
ってきたことが、こうした行為を生んでいるのではないかといいます。

 また、私立中学に入学すると、小学校時代にクラスでトップだった子でも、
150番、200番という順位をとることになります。このとき、「勉強ができる
ことだけ」をほめられてきた子は、他に自分の存在価値を見つけられず、何
事にも自信を失ってしまうそうです。

 受験生活ではどうしても成績が最大の関心事になります。だからこそ、わ
が子の別の面のよさを見つけ、それを評価してあげてほしいのです。人間の
価値は、いろんなところにあること、自然にそのことを知っている子は、友
だちもそういう面で見ることができますから、さまざまな友だちができます。

 受験生活では、子どもの奮起を促すために、「○○ちゃんには絶対負けな
いでね」「今度のテストは○○ちゃんに勝ったわね」といったことをつい口
にするお母さんがいます。これが3年間も続くと、子どもにとって友だちは
競争相手であって、協力しあう相手ではなくなります。この意識が強すぎる
と、入学後にいい友だち関係を築けない、勉強面でも友だちから学ぶという
ことができず、大変マイナスで残念だということです。

┏━┓
┃ま┃た、受験生活が長くなると、金銭的、肉体的負担から夫婦ともに非常
┗━┛にストレスがかかります。はじめてといっていい家庭の大問題なので、
これまで育ってきたお互いの人生観がぶつかります。

 激しい「喧嘩」状態になったり、挙句の果てに「無視」しあうようになっ
たり・・・・・・というご家庭もしばしば目にします。

 子どもの幸せを願って始めた受験なのに、これでは何にもなりません。大
切な夫婦関係が、受験で損なわれることがないよう、冷静に話し合って、協
力し合って受験生活を送ってほしいものです。

 ここからは私の意見ですが、「『全勝』は必ずしもいいとはいえない」結
果になることがあります。子どもによりますが、中には「人生を甘く考える
ようになる」子がいるのは事実です。ですから、「1つくらい不合格を経験
した方がいい」ように思います。

 一方、「効率よく、さほど努力しないで、親も苦労しないで合格」も望ま
しくないのです。

 キレイゴトのように思われるかもしれませんが、合格・不合格の「結果」
以上に、子どもがやるだけのことはやったという      ,−−、 
経験をし、親がわが子の努力を十分理解し、その      /      \
努力をほめられる受験こそ、「いい受験」だと思      V・  ・V
うのです。                     ω人=♀=ノω        
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(2009年11月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第58回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
 来年受験組にとっては、いよいよ志望校決定の最終段階を迎えています。
学校選びには、さまざまなファクターが影響してきます。それが雑音だった
り見当違いのものだったりもします。この問題に対する安田先生の考えは?
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    ■ 学校の持っている「深さ」を知ろう
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┏━┓
┃3┃ 、4年のころから学校説明会に行く保護者が少なくないが、「ずい
┗━┛ぶん出かけたけれど、どこも同じだった」という声をよく耳にするよ
 うになった。 

 また、以前と比べるとお父さんが熱心に受験にかかわるようになっている。
そうしたお父さんの中には、「その学校を訪れた数時間で何がわかるという
のか。校風で選べとはよく言われるが、これは無責任かつ非科学的だ。客観
的な偏差値や大学合格実績で選択することこそが合理的だ」とおっしゃる人
が少なからずいる。 

 自分の主観ではなく、客観的な材料で選んだ方が間違いがないというわけ
だ。 

 また、受ける相談の中にはこんなものがあった。模試の偏差値がいくつか、
英・数の授業時間数が何時間か、放課後や長期休暇中の補習や講習にはどん
なメニューがあるか、教科書・副教材は何を使っているか、大学入試に向け
た外部模試は何を受けているか……といった項目を設け、これらに自分なり
の点数をつけて、得点の高い学校がいい学校としている人までいた。 

┏━┓
┃私┃はこうしたケースに接すると、「もったいないな〜」と思うし、自分
┗━┛が学校の本当の魅力を皆さんに伝えることができていないのだと反省
する。 

 私は校長はじめ現場の先生ともよく話をする。 

 そうすると、「数字」からはわからない、それぞれが行っている教育の意
図・背景などがわかる。学校は長い歴史の中で先生が試行錯誤を繰り返しな
がら今の教育を実践しているのだ。 
                             ,−−、 
 そうしたものを知ろうとしないで、数字の比較で      /      \
選ぶことは、子どもを育てることについてどこまで      V・  ・V
深く考えているかどうか、見落とすことになる。     ω人=♀=ノω      
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(2009年10月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第57回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
 子どもと衝突すことが増えていませんか。年齢的にちょうど「反抗期」に
差しかかるこの時期、自我の目覚めから親離れの徴候がみられます。それ自
体は当然の成りゆき。その対策として、安田先生からのアドバイスです。
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    ■ あって当然、親子のバトル
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃受┃験生活では、親子ともにストレスがたまってきます。特に反抗期にさ
┗━┛しかかる子どもにしてみると、友だちと思い切り遊べない、常に勉強
に追いまくられている、親に管理されている、そうした気分が重なって、息
詰まりを感じてくるものです。

 そんなストレスと受験へのプレッシャーがあいまって、親と子どもがぶつ
かる親子のバトルのシーンも増えてきます。

「もう少ししっかりやらないと」と、激励のつもりでお母さんがかけた言葉
に、「やっているだろう!」、「ママが勉強しているんじゃないんだから。
だったらやってみてよ」とか「うざいんだよ」とか、かっとした子どもから
激しい言葉が返ってくることがあります。お母さんのほうも「子どものため」
にという意識があるため、ついかっとなって、「誰のためにママだって頑張
っていると思うの」とヒステリーを起こしてしまいます。

 そんなぶつかりあいが生じたら、子どもとの間に少し距離をおいてみませ
んか。もしかしたら気づかずにいつの間にか過干渉になっているのかもしれ
ません。必要以上に子どもの勉強に口や手をだし、指図していませんか。

┏━┓
┃小┃学校も高学年になってくると、自分の意志や考えを持つしっかりとし
┗━┛た自我が育ってくる時期です。いちいち親に指図されたり、リードさ
れたりすることがうっとうしくなって当然です。

 そんな様子が見られたら、少し遠くから見守る気持ちで、本人に勉強やス
ケジュールの管理をさせてみるという手があります。

 本人の自覚が低くて、自己管理はとても無理だ、というのであれば、例え
ば家で勉強する時間を、塾の自習室で勉強してくる
時間にあててみたりして、物理的に親子が顔を合わ      ,−−、 
せる時間を少し減らしてみるというのもひとつの方      /      \
法です。そんなちょっとした距離の置き方で、お互     V・  ・V
いの緊張感を回避することができたりするものです。  ω人=♀=ノω   
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(2009年9月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第56回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
 「中学受験は親次第」といった言葉に過剰に踊っていませんか。受験のこ
となら、なにもかも「効率よく」と手伝ってしまう親が目につきます。よか
れと思う親心が自立心を奪っていませんか。安田先生からのアドバイスです。
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    ■ 受験の主役はあくまで「子ども」
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃は┃じめて中学受験に臨んだときに、「合格・不合格の半分は親で決まる」
┗━┛という言葉が耳に入ってくると、お母さんはどうしても一生懸命にな
る。「私のせいで落ちるなんていうことがあってはならない。親戚からも、
隣近所からも、私自身が試されている。」―そうした心理状態に陥るのであ
る。

「母親としてやれることは何でもやろう」学年が上がり、入試本番まで日数
が限られてくると、時間がものすごく貴重に感じられ、一秒足りともムダに
は出来ないという思いに駆られる。

 その結果、起床から食事、風呂、就寝までの時間管理は無論、部屋の掃除
から着るものの準備まですべて手を出して効率よく進めようとする。

 自分に自信があるお母さんほど、勉強面でも主導権を握ってリードしよう
とする傾向が強いように思う。まさに「自分が主人公」になってしまうのだ。

 確かに、中学受験は子どもが幼いから親がリードしなければならない―そ
うした部分がある。が、最後に伸びる子は、受験を自分自身の問題、自分自
身の責任と意識した子なのだ。

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┃親┃が決めて、そのとおりやらせるのではなく、できるだけ早いうちに、
┗━┛子ども自身に「受験するのはお母さん、ママではなく自分なのだ」と
いう気持ちにさせることが大切だ。

 そのためにも、親が何でも先に手を打つことを止めてはどうだろう。

「今の成績ではどこにも受からないわよ」、「○○学園の方がいいんじゃな
い?」、「△△の『過去問』買ってきたわよ」「××の学校説明会に行った
ら」……とつい言いたくなるのはわかる。受験は時間に限りがあるだけに、
焦りの気持ちから待てなくてつい言ってしまいがちだ。

 じっと我慢するのは辛いが、我慢しないで指図してしまうと、子どもはい
つまでたっても自分のこととは捉えられない。時間はかかるが、日々の細か
なことから自分でやらせるようにしないと、何事も
親に依存する子どもになってしまう。                ,−−、   
                                                    /      \
 自立心がない子が、受験を自分自身の問題と考え     V・  ・V
るわけがないのだから。               ω人=♀=ノω    
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(2009年8月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第55回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
  ことしも夏休みが近づいてきました。誰しも「夏期講習」などに通わせ
て夏休み中に実力を貯えようと考えます。そのことは大切ですが、11〜12歳
の多感な時期に“人間力”を高めるような方策も必要なのかもしれません。
かえってそれが“受験力”を高めることに。安田先生からのアドバイス。
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    ■ 極力、普段と違うことを親子でやろう
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃ほ┃とんどの子どもが、この夏には夏期講習に通うことと思う。
┗━┛
 夏期講習期間中は、講習で習うことはもう二度と学習しないというくらい
の覚悟で、予復習をしっかりやって学習範囲をマスターするようにしたい。
この期間は他のことには手を出さなくていい。

 講習のない期間だが、この期間は「これまでやってきたことの総復習」と
「苦手教科、単元の克服」にあてる。受験勉強がよほど順調に推移している
子どもを除いては、先を急ぐよりこの2つを万全にすることに力を注ぐこと
が大切。

 スタートが遅く、まだここまで行っていないという子どももいるだろう。
受験範囲の勉強をまだ一通り終わっていなければ、夏休み中には一通り終え
られるよう計画を立てたい。基礎基本をしっかり身につけることが何より大
切だからだ。

┏━┓
┃一┃方、お盆の時期でお父さんも家にいるというようなときは、思い切っ
┗━┛て普段できないことをしたい。今の子は昔の子と比べて情報をたくさ
ん持っているので、なんとなくいろんな経験もしているように錯覚している
が、実際には実体験はかなり乏しくなっている。映像を見て知識としては知
っていても、自分で体験したこととなるととても少ないのが実情だ。

 長期旅行するなどという大げさなことをしなくても、できることはいくら
でもある。どこに出かけるかは、ついお父さんやお母さんが提案しがちだが、
まずは子どもにやってみたいことを聞いてほしい。子どもの口から何も出て
こないようだったら、子どもの普段の様子から興味を持っていそうなジャン
ルの博物館、スポーツの試合、演奏会などを候補としてみてはどうだろうか。

 またせっかく時間があるのだから、山や海、湖、川など自然の中に出かけ
ることもお勧め。早起きすれば結構遠くまで行けるものだ。

 夏の一時期は、子どもの好きなことを思いっきり         ,−−、
させてあげる時間、そうしたものをまだ持っていな      /      \
ければ、興味を持って打ち込めるものを見つける時     V・  ・V
間にしてほしい。                  ω人=♀=ノω     
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(2009年7月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第54回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
  子どもは親を見て育ち、親を手本に成長します。日常生活から、ものご
とに取り組む力が養われます。中学受験もしかり。ところが最近、いやなこ
とや難しいことは他人まかせにする風潮が……。子どもの自立を阻害すれば、
受験のみならずその子の一生にもかかわる問題、と安田先生は警鐘。
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    ■ お母さんの姿勢が子どもの自立を妨げている?
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃中┃学受験は、自立できている子ほど合格する。
┗━┛
 ところが、お母さんの日常の姿勢は逆に子どもを自立させないようにして
いるのではないだろうか。

 先日会ったある女子校の校長から、こんな話を聞いた。その学校は、「自
分たちが過ごす場所は、自分たちの手で清掃する」ことを教育方針にしてい
る。だからトイレも、毎日生徒が自分たちで交替で掃除する。

 ところが保護者会で、母親たちから「PTAでお金を出しますから、トイ
レ掃除は業者にやらせてください」という声が出たという。

 校長は、嘆いていた。「嫌なこと、面倒なことは、お金を払ってみんな外
の業者に委託する。またそうしたビジネスがとても繁盛する。困った風潮で
す」

 以前は、掃除を業者に頼むということなどなかった。引越しにしても、荷
造りは極力家族でやったもの。それが最近のテレビCMを見ていると、何か
ら何まで引越し業者がやってくれて、本人たちは体を引越し先に移動させる
だけ。

 食事にしても、ファミレスの発達のお陰で、以前だったらたまにする程度
だった外食が、ごく日常的な光景になっている。外食しないまでも、中食と
いって、デパートやスーパーの惣菜売り場やコンビニに行けば、容器のまま
すぐ家で食べられる状態のものがそろっている。電子レンジにかけさえすれ
ばOKな冷凍食品もあらゆるものがそろっている。

 家事の多くを「外注化」するお母さんの姿を見て育った子が、これからい
ろいろなことに出くわしたとき、自分自身でやり遂げようとするだろうか。
嫌いなこと、苦手なこと、困難なことを、人に頼らず自分自身の力で解決し
ようとするだろうか。

 おいしくなくても(失礼)お母さん自身が作ったもの、へたでもお母さん
がかけてくれたアイロン、ピカピカでなくてもお母さんが掃除機を動かす家
の掃除。毎日のそうした姿が「自分のことは自分でやるものだ」という意識
を子どもの中に育てるのだと思う。

┏━┓
┃本┃の中の立派な話よりも、お母さんの毎日の姿のほうが、何倍も子ども
┗━┛への教育力を持っていると思う。お母さん自身がなるべく自分の手で
家事をすると同時に、子どもにもいろんなことをやらせたい。危なっかしい
と、つい手を出してしまいがちだ。壊されたり、汚されたりするのが嫌で、
子どもがやろうとする前に止めてしまいがちでもある。

 何かにつけて口を出し、手をかけ、挙げ句の果てにストップさせる。そし
て自分自身もお金を払うことで他人の力を当てにする。でも、お母さんがそ
うした姿勢だったら、子どももなかなか自立しない
のではないか。                       
                                ,−−、
 お母さんのふだんの生活ぶりが、いつのまにかお      /      \
子さんに大きく影響するということを忘れないでほ     V・  ・V
しい。                       ω人=♀=ノω   
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(2009年6月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第53回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
  近年の首都圏の中学入試には、極端から極端に振れる傾向に。ひとつの
きっかけで受験生の数が激しく増減し、その桁数が変わるという現象も珍し
くありません。多くは報道・評判・口コミなどからの“風評”効果とみられ
ます。果たしてそれでいいのでしょうか。そんな風潮に安田先生は……。
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    ■ 「新しいもの好き」で、いいのか?
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃こ┃こ数年ずっと気になっていることがある。共学化した、移転した、新
┗━┛しいコースを設けた、午後入試を導入した、特待入試を実施した……
新しいことを始めた学校、そうしたことが話題になった学校の応募者が猛烈
に増える現象が顕著なことである。

 これまででいえば、

  ● 移転・共学化 かえつ有明、法政大学、明大明治
  ● 移転・中等教育学校化 横浜富士見丘
  ● 「コース制」の導入 十文字スーパー選抜、大妻中野アドバンスト、
    国学院久我山ST選抜、広尾学園特進選抜、鶴見大学附難関進学
  ● 特待入試の実施 足立学園特別奨学生

 こうしたことを実施したからといってすべての学校がうまくいったわけで
はないが、上記の学校は、これらをきっかけに一段と応募者を増加させた。 

 2009年入試では、国学院久我山ST選抜、広尾学園特進選抜、鶴見大学附
難関進学、足立学園特別奨学生などが人気を継続させたほか、

  ● 「コース制」の導入 開智先端創造
  ● 午後入試の導入 桜美林

 の2校が、これらをきっかけに他の入試回も大幅に増加させ、大爆発した。

他の入試回を合わせた総受験者数をチェックしてみると、広尾学園が3334名、
開智が2652名、国学院久我山が1997名、桜美林が1677名、足立学園が1129名
と、なんと4桁を超えた学校が5校もある。

┏━┓
┃そ┃の一方、横浜富士見丘、十文字スーパー選抜、大妻中野アドバンスト
┗━┛など、保護者の熱が冷めてしまった学校(入試回)も結構ある。

 何を言いたいかといえば、学校の中身は変わっていないのに、こんな短期
間で熱が高まったり冷めたりするのは、報道等に流
されすぎではないかということである。             ,−−、
                             /      \
 報道、評判で動くのではなく、もっと自分の目を     V・  ・V
信じて自分で判断して選んではどうだろう。      ω人=♀=ノω    
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(2009年5月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第52回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
  新学期が始まり、6年生の保護者には受験へのプレッシャーが徐々に高
まっていることと思います。受験には不安と焦りはつきものです。ただし、
心構えひとつで余裕も生まれます。今回は、安田先生のそんなお話です。
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    ■ 受験生活はスムーズには運ばない
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃新┃学年が始まりました。6年生はいよいよ受験学年。お母さんは武者ぶ
┗━┛るいする心境ではないでしょうか。が、わが子といえば、相変わらず
マイペース。受験生としての意識がまるでないように見える。ボケッとして
いる姿を見ると、イライラ……イライラ……。ノウテンキな口ぶりにはつい
とがった返答をしてしまう……。

 そんな後は自己嫌悪に陥る。そんなことを繰り返す日々。

 これから先、「そんなに勉強したくないなら受験なんかしなくていい!」
なんど怒鳴ることになるか。時間が貴重になる秋以降になると、少しでも効
率よく進めようと焦るお母さんと、ダラダラしているわが子との間でより激
しいバトルが繰り広げられます。

 でもこれはお宅だけの話ではありません。受験生をもつ家庭ならば95%は
こんなものです。

 私は講演ではよくこんな言い方をしています。「受験生活は『谷』あり、
『谷』あり……」。「『山』あり、『谷』あり」ではないのです。

 もちろん、素直に勉強したり、いい成績をとってきたり……『山』もあり
ます。が、精神的には圧倒的に『谷』に感じることの方が多いものです。

┏━┓
┃こ┃れからは、通塾日数も増える(お弁当を作る回数がそのぶん増加)、
┗━┛受験校を決めるために数限りなく学校を訪れることになる、朝早くか
ら模擬試験に付き添う……など、体力が必要となります。

 塾の先生や塾仲間のお母さんとの交渉、やりとりで神経もものすごく使い
ます。

 受験を終えた後に、ほとんどのお母さんが、「こ
んなにも大変だとは思わなかった。二度とやりたく        ,−−、
ない」という感想を漏らします。まず、これからの      /      \
生活はこんなものだという意識と覚悟を持ってくだ     V・  ・V
さい。                       ω人=♀=ノω
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(2009年4月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第51回》
 ||nnn ┏━┳━┳━┳━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓ 
 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
  入試本番で受験生は持っている実力を出し切れるかどうか、そのことが
たいへん重要だということはいうまでもありません。結果として、合格者の
予想偏差値は大きくブレていることは予想されます。今回は、それを裏付け
るようなお話。ただ、同一校を受け続けるかどうか、判断は難しいところ。
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    ■ 合格者の偏差値差は20もあった!
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃そ┃の学校は、入試相談のときに模試でどのくらいの偏差値を取っている
┗━┛か聞いている。もちろん自分のところを受けてくる受験生が各模試で
どのくらいのレベルの受験生か知りたいためであって、合否にはまったく関
係しない。そうしたことをしているので、各入試回の合否の一覧表の備考欄
に模試の偏差値も参考までに記載してある。

 私が見せてもらったものは氏名は削除されたものであったが、受験番号は
記載されているので、その受験生がどの入試回を受けて、それぞれ結果がど
うだったかはわかる。

 受験生の属性は皆目わからないから、偏差値に注目してみていくと、同一
の入試回で、四谷大塚32、首都圏模試41で受かっている受験生がいる一
方で、四谷大塚52、センター模試46で落ちている受験生がいる。なんと
20も違っていて逆の合否になっているのである。

 実力をきちんと出し切れるようにするためには、入試本番に体と精神の両
面でピークの状態にもっていくことがいかに大切かわかるのだ。直前はとも
すれば「穴を埋める」といったことに神経が行き勉強ばかりさせがちだが、
子どもが平常心で臨めるようにすることのほうがよほど重要だということが
わかるだろう。

┏━┓
┃説┃明会では、どの学校も「1回目、2回目に不合格だった子も3回目に
┗━┛は受かっています」「同一レベルの問題、出題スタイルも変わらない
ので、何回か受けて慣れるのでしょう。偏差値的には高くても受かりますね」
……といった話をする。

 見せてもらった表で不合格者の受験番号を追跡していくと、1回、2回、
3回と落ちても、4回目に受かっている子がいる。が、その一方で、4回目
もまたダメだったという子がその何倍もいるのである。

 第一志望の学校だから、「過去問」を何回もこなしてきた学校だから、受
験機会があるのにあきらめるのは辛い。が、「何度挑戦してもダメなものは
ダメ」というケースのほうが多い。

 入試本番に突入する前に、冷静な頭で、2回落ち        ,−−、
た場合にどうするか、3回落ちた場合にどうするか、     /      \
そういったことまで想定して決めておきたいもので     V・  ・V
ある。                       ω人=♀=ノω 
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(2009年3月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第50回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
  近年、根強い私立大学付属校の人気。今回安田先生は、その理由につい
て考察しています。ヒントは、親の意識のありよう。いまの親世代の受験期
はどうであったか。20年ほど前の状況を振り返ってみると、私立大学の人気
が急激にアップした「私高国低」時期にあたる。そうしたところから……。
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    ■ 付属校志向の背景は保護者の大学受験時代の経験?
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃首┃都圏の私立中学で、併設大学に50%以上が進んでいる付属校らしい
┗━┛共学校が16校と、共学校が圧倒的に多くなっている。日大系5校、慶
應系3校、明治系3校、立教系3校、東海大系3校、学習院系2校、法政系
2校と、特定の総合大学に70%以上が集中している。

 付属校らしい付属校自体が激減している。それも以前多かった女子大系の
減少が著しい。受験生サイドからすると、総合大学でないと進路面から選択
しにくい……そうしたことが読み取れる。

 とりわけ日大系、明治系、東海大系の人気が目に付く。明治系は明大明治
の移転・共学化と大きな話題があってあちこちで盛んに取り上げられたので、
こうした状況も十分理解できる。では、日大系、東海大系はどうしてなのだ
ろうか。

┏━┓
┃お┃母さん方と接していて感じることの一つに、「偏差値が高い学校の受
┗━┛験だから受験生活が大変、易しい学校だから楽」ということはないと
いうことがある。中学受験を知らない周辺のひとは、受験校のレベルが高い
ほど受験生活が大変と思っているが、確かに勉強時間面ではそうしたことは
言えても、受験校のレベルと母親の苦労との間にはむしろ相関関係はないと
言った方がいい。

 易しい学校を受けるケースでは、往々にして子どもの意識が受験生になっ
ていない。とりわけ男の子にそうした傾向が強く、そのためひっきりなしに
親子バトルが繰り広げられることになる。この受験生活のしんどさが、「も
う2度とこんな経験はしたくない」と、付属校を選ばせるのではないだろう
か。

 それにしても、「大学全入時代」と言われるいま、中学から付属校を選ぶ
理由は他にあるのではないだろうか―ずっとそうした思いが付きまとってい
た。ふと、保護者の意識が気になった。保護者が体験した大学受験時代の状
況はどうだったのか。そこに思い至り、今回20年前の大学入試状況を調べて
みた。

┏━┓
┃4┃年制大学の数は474校。保護者が大学に進学した当時は、文字通り
┗━┛験だから受験生活が大変、易しい学校だから楽」ということはないと

   バブルのさなか。それでも当時の大学・短大進学率は36%程度だった。
20年前の「共通一次試験」時代は、国公立大学は実質1校受験。共通一次試
験導入により1期校、2期校の別がなくなったためである。これにより大変
な勉強をしても国立大学を1校しか受験できないのでは割に合わないとの考
えが広がり、また1校しか受験できないことで、国立大学志望者のスベリ止
めとして私立大学の人気が急激にアップした。

 またバブル景気で、誰もが東京ないし東京周辺の大学で学びたい(実情は
遊びたい)、地方の家庭でも子どもを東京へ出せる家計状況でもあったため
に、首都圏の私立大学が軒並み難化した時代だった。「私高国低」と言われ、
東京の私立大学がいまよりずっと難しかった時代。

 保護者の潜在意識の中に、当時のそうした状況が      ,−−、
しっかり残っており、それがいまの付属校志向へと     /      \
地価水脈のごとくつながっているのではないだろう   V・  ・V
か。                       ω人=♀=ノω  
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(2009年2月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第49回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
  いよいよ入試本番が近づいてきました。気持ちの高ぶりや不安感から、
ついつい平常心から逸脱してしまうことがあります。さらに、複数校を短期
間に受験する場合には、次々と頭の切り替えが必要になります。いちばん大
切なこの時期に思わぬ失敗に陥らないため、安田先生からのアドバイス。
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    ■ 「し忘れ」を防ぐことが大事
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃こ┃れからの時期、親の役割としていちばん心配なのが、「し忘れ」。何
┗━┛日までに受験料を納入、何日までに願書を提出、何日までに入学金を
納入……といったように。また○○中の集合時間は何時、△△学園の合格発
表は何時……といったように、これからやることは期日・時間というものが
付きまとう。

「締め切りを過ぎてしまった!」という失敗がいちばん怖い。そんなことあ
りえないと思うかもしれないが、1校、2校なら混同しないものが、5校、
6校となってくると、思い込み、勘違いから来る「し忘れ」が生じやすいも
の。

 それを防ぐために、これから入学手続きの日まで常に持ち歩く日付入りの
受験ノートを1冊用意し、受験に関することはすべてこのノートに記入する
ようにする。ノートの各ページにはどこにも共通する欄と受験する可能性が
ある学校ごとの欄を設けておく。

┏━┓
┃お┃金のことも重要。受験料・入学手続き金はそれぞれいくらか、いつま
┗━┛でに振り込む必要があるのか、振り込む銀行・支店はどこか、こうし
たことも必ず記入しておく。

 このノートは、毎朝必ず目を通すクセを付けておくと、いちばん怖い「し
忘れ」を防げる。

 願書の記入も、注意書きを入念に読んでから着手すること。ふりがなはカ
タカナで書いてあればカタカナ、ひらがなならひらがなが鉄則。何事も記入
例どおりにするという姿勢で行くこと。

 写真のサイズも混同しないように。写真屋さんで撮ったら、ネガも渡して
くれるので、万が一の場合に備えて、すぐ取り出せる
ところに保管しておきたい。                 ,−−、 
                             /      \
 用事が多いからといってバタバタすることなく、一   V・  ・V
つずつ確実にこなすことが大切だろう。        ω人=♀=ノω  
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(2009年1月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第48回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
  秋も押し詰まった10月、11月の段階で、来春の入試要項変更の発表があ
りました。それも、国公立中学を代表するような2校から。これまでは、前
年踏襲を大前提にデンと構えていた国公立中学に何が起こっているのでしょ
う。安田先生に変更概要の内容とその狙いについて解説いただきました。
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    ■ 国公立中も競争する時代に
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃10┃月、11月というぎりぎりの時期になって、国立大学附属、公立中高一
┗━┛貫校の入試要項の変更が発表された。国立、公立と言えば、前例踏襲
というイメージが強く、また変更する場合でも早くから周知を図ることが一
般的であった。

 が、来年まで待たずにぎりぎりになっての発表である。国立、公立もゆっ
たり構えている時代ではなくなった、優秀な生徒を確保するためには少しで
も早く手を打つということだ。以下に、千代田区立九段中等教育学校と横浜
国大附属鎌倉中の2校について、その概要を紹介しよう。

  ◆ 千代田区立九段中等教育学校 (変更点は5つもある)
  ・ 報告書:小学6年生の観点別評価及び評定→小学4、5、6年生の評定
  ・ 適性検査時間:45分→60分
  ・ 集合時刻:9時30分→9時
  ・ 合格発表日:2月9日→2月6日
  ・ 入学手続き日:2月9日9時から15時まで、10日9時から正午→2月6日9
       時から15時まで、7日9時から正午まで

┏━┓
┃都┃立の中高一貫校の発表は2月9日のままであるから、影響は大きい。私
┗━┛立を併願していて、その手続き日が6日、7日、8日だったら、入学金を
節約するために他の都立中高一貫校から九段に志望変更する可能性がある。
また、9日まで待てずに私立に手続きしていた受験生が6日なら九段に入学す
るケースもあるだろう。

 報告書で「合否判定の対象とする部分から観点別評価を除外した」ことか
ら、入学後の生徒の観察から、小学校の先生の観察でつけられる観点別評価
が当てにならないと判断していることがわかる。

 また、小学4年生までを対象としたことをみると、小学4年生のときから着
実に努力を積み重ねた生徒を望んでいることがうかがわれる。ただこのこと
は、小学4,5年時の評定がよくなかった受験生から敬遠される要因にもなる
ので、上記の志望者数の増加要因とプラスマイナスとなりそうだ。

  ◆ 横浜国大附属鎌倉中 (変更点は1つ)
  ・10月になって入試日を2月2日とすると発表

 これで横浜国大附属横浜中学校と同一日になり、こ
れまで可能であった併願ができなくなる。附属横浜の       ,−−、 
ほうが県立光陵高校との連携で話題性があり、実際に     /      \
模試での志望者数も差がついているだけに、危機意識   V・  ・V
からこの時期になって日程を変更したようだ。     ω人=♀=ノω   
--------------------------------------------------------------------
(2008年12月10日配信)
 
 
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 ∩   《連載/第47回》
 ||nnn ┏━┳━┳━┳━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓ 
 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
  東京都より、都内にある私立中学校の来年度募集状況が発表されました。
安田先生はさっそく、この数字を10年前と比較。変わったところ変わらない
ところがあり、そこから何が読み取れるかを綴っていただきました。
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    ■ 受験者は増えても募集人員は変化なし
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃先┃ごろ都生活文化スポーツ局から、都内にある私立中学校の来年度の募
┗━┛集要項が発表になった。生徒募集を行う学校数は、179校。募集人員
   の合計は前年度より(わずか)11人多い25,660人。

 内訳は、男子校35校、女子校78校、男女校(役所では共学校をこう表記し
ている)66校。男子校は女子校の半数もない。近県では男女校が多いが、都
内だけでは女子校の数が最多である。

 この機会に、2000年の数字を調べてみた(下段の表)。

          09年度          08年度
        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   校種     校数   募集人員      校数   募集人員
   男子校   35校    6,553人      35校    6,611人
   女子校   78校   11,158人      79校   11,390人
   男女校   66校    7,946人      65校    7,640人
    計     179校   25,657人     179校   25,641人
 
          01年度           00年度
        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   校種     校数    募集人員     校数    募集人員
   男子校   42校     7,311人     42校     7,311人
   女子校   90校    12,835人     90校    12,903人
   男女校   45校     5,604人     44校     5,504人
    計     177校    25,750人    176校    25,718人

┏━┓
┃意┃外なことに、校数は増加していながら募集人員は増えていない。また
┗━┛男子校・女子校が7校、12校も減り、男女校が21校も増えている。こ
の10年の間で募集人員はほとんど変わっていないのにその中身はずいぶん違
っているのである。 
                              ,−−、 
 受験者数は2000年度当時より大幅に増えているか     /      \
ら、厳しくなっている理由もこうした背景から分か   V・  ・V 
るのである。                   ω人=♀=ノω   
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(2008年11月10日配信)
 
 
・‥…━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…‥・
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 ∩   《連載/第46回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
 
  公立中高一貫校の「適性検査問題」や難関中学の入試問題で注目される
『PISA型』の学力検査。もともと国際的な学力調査に用いられていたも
のですが、近年は他の私学にもじわりと広がっています。こうした傾向の背
景と家庭でできる『PISA型』試験対策について触れていただきました。
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    ■ 2009年入試では『PISA型』入試が増加
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃最┃近『PISA型』学力という言葉をよく耳にするだろう。PISA調
┗━┛査というのは、OECD(経済協力開発機構)が実施している国際学
力調査のこと。PISA調査は、学校のカリキュラムをどの程度習得してい
るかを評価するものではなく、「知識や経験をもとに、自らの将来の生活に
関する課題を積極的に考え、知識や技能を活用する能力があるか」をみるも
の。
 
 具体的には、
 
(1) 知識や技能を実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できる
    かをみる。
(2) 図表・グラフ・地図などを含む文章が重視され、出題の約4割を占める。
(3)「選択式」を中心にしながらも「自由記述形式」の出題が約4割を占め
   る。
(4) 記述式では、答えを出すための「方法や考え方を説明する」ことが求め
   られる。
(5) 読解力として「自分の意見を表現する」ことが求められる。
 
 という特徴がある。
 
 この調査(3年に1回)のたびごとに日本の順位が下がっていることが、
「学力低下」の根拠の1つとなっている。付け加えておくと、昨年から始ま
った文部科学省の全国学力調査は、国語・数学の問題は「知識」の「A」と
「活用」の「B」の2種類に分かれているが、B=活用は『PISA型』学
力の出題傾向を踏まえて出題されている。
 
┏━┓
┃こ┃こまで読んでお分かりのように、公立中高一貫校の「適性検査問題」
┗━┛や難関中学の入試問題はこの方向にある。が、2009年度入試に向けて、
難関校でなくても、『PISA型』の問題で入試を行うという学校が出てき
ている。
 
 こうした『PISA型』に対して家庭でできることだが、一例を挙げると、
新聞に出ている図表・グラフ・地図などを使って、「なぜそうなっているの
だろうね」「あなたはどう思うの?」「あなただったらどうする?」といっ
たような問いかけをすることが有効だ。といっても、こうしたやりとりがス
ムーズにできる子どもはごく一握り。大多数の子どもは黙ったままか、見当
ハズレのことを言うだろう。
 
 そうしたときに、怒ったり、すぐに答えを言ってしまってはこうした力は
つかない。辛抱強く子どもが発言するのを待つことが重要。ヒントを与えな
がら少しずつでも自分の頭で考えさせること。自分
なりの考え・意見を言うことができるように導いて       ,−−、 
あげたい。そうすれば少しずつ発言もできるように     /      \
なる。……日々のそうした積み重ねが、『PISA   V・  ・V 
型』中学入試問題への根本的な対応策だ。      ω人=♀=ノω    
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(2008年10月10日配信)
 
 

・‥…━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…‥・
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 ∩   《連載/第45回》
 ||nnn ┏━┳━┳━┳━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓ 
 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
  
  近年「特待入試」を導入する学校が増え、受験する生徒も増加していま
す。が、その制度は6年間を保証するものではなく、成績が落ちれば普通の
生徒と同じ扱いになるものがほとんど。したがって「『特待生』でなくなっ
たときにも通わせられるか」が肝要。安田先生はその辺りの事情を語ります。
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    ■ 「特待入試」が増えているが
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃大┃妻中野、東京純心女子など、2009年度入試ではじめて「特待入試」を
┗━┛導入する学校が増えている。
 
 ・中学受験の裾野が広がっているが、広がっているのはこれまで私立中学
  受験を考えていなかった家庭層。
 ・物価の上昇で、家庭の財布事情が厳しくなっていることに配慮。
 ・公立中高一貫校が増え、その受験者に併願してもらうために導入。
 ・「特待生」ということで、他校に持っていかれないための防衛策として
  用意。
 
 といったことが増えている背景だろう。
 
 親たるもの、わが子が「特待生」で合格してくれたら助かる、と誰もが思
う。「特待生」でなければ私立には進学させられないという家庭もある。だ
から、こうした制度のある学校だけを受験するという中学受験のしかたもあ
る。この場合には、子どもに「うちは『特待生』でなければ私立には進学さ
せられない」ということをハッキリ話したほうがいい。そのくらい大人扱い
してもいいのではないだろうか。
 
┏━┓
┃運┃良く「特待生」合格して、その後も常に成績良好で、学年が進んでも
┗━┛そのまま「特待生」でいられれば何も問題はないが、現実にはこんな
ケースもある。
 
「先生、今回のテストの成績で、来年度も『特待生』でいられますか?」、
定期試験が終わってしばらくして、生徒が担任のところに心配そうな顔をし
て尋ねてくる。「学年末の教員室では、最近こうした光景がよく見られる」
と、ある学校の先生が話してくれた。スレスレの成績の場合には、子どもに
はすごいプレッシャーになる。 
 
 だから、「特待生」でなくなったら退学させるしかないというようなギリ
ギリでの進学はやめたほうがいい。学校への納付金以外にも、通学の費用、
制服代、部活動の費用、学校行事の費用など様々な
費用がかかるので、ある程度の余裕を見てほしい。  
                                                  ,−−、 
 高校進学段階で、経済的な理由で公立に転出する     /      \
ケースも実際に目にするので、無理な進学はお勧め   V・  ・V 
できない。                     ω人=♀=ノω    
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(2008年9月10日配信)
 
 

・‥…━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…‥・
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 ∩   《連載/第44回》
 ||nnn ┏━┳━┳━┳━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓ 
 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
  
 安田先生は、7月26日の朝日新聞「学校教育に対する保護者の意識調査」
にコメントを寄せています。が、新聞に出ていなかった『学校に期待するこ
との3位、4位が、「道徳」や「マナー」』に強い衝撃を受けたそうです。
親が子どもをしつけられない時代。一方で「わがままに育った子は受験を投
げ出したりしがち」といいます。なんらかの解決策はあるのでしょうか。
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    ■ 「しつけ」を学校に頼る保護者
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏━┓
┃7┃月26日の朝日新聞の朝刊に、朝日新聞社とベネッセの共同調査「学校
┗━┛教育に対する保護者の意識調査」が3面にも渡る大きな記事になって
いたのを読まれた方も多いと思う。その調査結果のデータは安田教育研究所
にも持ち込まれ、私も長めのコメントを寄せている。
 
 実は、新聞に載っていない部分で、私が驚いたデータがある。「学校にど
のような教育や指導を期待しますか」の項目で、「道徳や思いやりを教える」
「社会のマナーやルールを教える」が3位、4位で、ともに93%の保護者が
学校にやってほしいと答えているのである。
 
 3位、4位であるから、こうしたことの大切さを感じていることは大変い
いのであるが、大切さがわかっていながら、それらを自分たちではできない
と言っているのである。
 
 確かに、親子は、長年ひとつ屋根の下で暮らしてきて、出来上がってしま
った関係というものがどうしてもある。今になってお互いの口の利き方を変
える、習慣を変えるといっても、お互いが同時にそんな心境になるのは実際
のところ無理な面がある。そうしたとき、お父さん・お母さんの弟や妹が案
外有効だ。お父さん・お母さんより若くて本人に近いだけに、本人も心を開
きやすい。
 
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┃事┃情を話して、お子さんに言いたいことを代わりに言ってもらう。それ
┗━┛だけでなく、おじさん・おばさんが気づいたことを遠慮なく本人に言
ってもらうようにする。社会性を養ううえでもとてもいいのではないだろう
か。
 
 自分に関心を持ってくれる人がいることをふだんからわかっていれば、注
意されたときなども素直に聞ける。ところがそうした人間関係を持ったこと
のない子どもは、見も知らぬ大人から注意されたりすると、とたんにパニッ
クに陥って、聞くどころか逆に攻撃的になってしまうことがよくある。
 
 ふだんからいろんな大人と接することに慣れていれば、大人からいろんな
ことを学べる。大人に心を開いている子には、大人の方も力を貸してくれる
はずだ。
 
 自分たちでしつけることが難しいならば、子どもが身近な大人と接する機
会をできるだけ作るようにするといいのではないだろうか。
 
 しつけができていない子、自分勝手で、わがままに育った子は、受験にお
いても模試などで不本意な結果が出たり、勉強が思う
ようにはかどらなかったりすると、受験を投げ出した
りしがちです。                        ,−−、
                             /      \
 そんなことにならないよう、早いうちに精神的にも   V・  ・V 
大人にさせたい。                    ω人=♀=ノω 
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(2008年8月10日配信)
 
 

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 ∩   《連載/第43回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
  
  中学受験への父親の参加が何かと話題になっています。しかも、その長
所より短所のほうが目に付くようになりました。安田先生は、学校選択は結
婚、あるいは登山に似て「本人の意向」が大切であると強調されます。
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    ■ 合わない靴では頂上までたどり着けない
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┃最┃近、父親がわが子の受験に熱心に取り組むようになっている。幾つも
┗━┛の学校で、「学校説明会に皆勤(すべての会に参加)して、いつも最
後まで残って質問してくる父親がいた」という話を聞いたし、今年度入試で
は、1校につき合格は1つ取ればOKなのに、その学校の入試回すべての合
格を取ったという(まったく意味がない)、理解しがたいケースまであった。
 
 自分自身も中学受験を経験したという人が多くなっていることも、父親の
参加率の上昇と温度の高さにつながっている。
 
 最近、知り合いのお母さんからもこんな悩みを打ち明けられた。父親が、
会社で部下を評価するのと同じ感覚で、各校の偏差値、主要教科の授業時間
数、放課後の講習、長期休暇期間中の講習、教科書・副教材、国公立大学合
格者数、早慶上智合格者数、1クラスの人数……などの項目を設けた表を作
り、各項目の合計点の高い学校こそ間違いがないと主張するのだそうである。
 
 お母さんのほうは、学校が持っている教育上の工夫、生徒への温かなアプ
ローチ、生き生きしている在校生の姿……そうしたものから別な学校をいい
と思っていて、子どももその学校にいい印象を持っているという。
 
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┃結┃婚でもそうではないだろう。若くして就職希望ランキング入りする有
┗━┛名企業の管理職、年収1千万以上、身長が自分より10センチ以上高い、
都心のマンションに居住……といった誰もがうらやむ好条件の相手でも、結
婚生活は5年で終結、などという話はザラにある。この父親が熱心に研究し
ている客観的条件も、所詮はその類いだと思う。
 
 それに、子どもは、「行きたい」学校があるからこそつらい勉強を乗り切
れるのである。実際、やさしい学校は軒並み不合格だったのに、偏差値的に
はいちばん高かった自分が入りたかった学校だけ受かった、というケースが
よくあるのだ。
                                ,−−、
 本人が受けたい学校を受けさせる―これが鉄則であ       /      \
る。また登山の世界では、「合わない靴では頂上まで   V・  ・V
たどり着けない」と言われている。            ω人=♀=ノω     
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(2008年7月10日配信)
 
 

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 ∩   《連載/第42回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
  
  「マニュフェスト」といえば、何年か前から選挙のときにつかわれ出し
た、いわゆる「公約」とか「宣言」といった意味をあらわすイタリア語。こ
の言葉が、私立中学の受験にも散見されるようになりました。しかして、そ
の実態は? 今回は、そんなことに関する安田先生のレポートです。
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    ■ マニュフェストが流行っているが・・・
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┃数┃年前から、マニュフェストを掲げる学校が多くなった。新設校や大胆
┗━┛に学校を模様替えしようという学校が、今現在大学合格実績がないこ
とをこうした「目標値」で代理表現しているわけである。いわば白紙の状態
であるから、思い切った数字を掲げられる。中途半端に大学合格実績が出て
いる学校の場合にはこうはいかない。
 
 先にライバル校が40%と打ち出せば、いきおい後発校は50%とさらに
上を打ち出さざるをえない。こうしてマニュフェストはどんどんエスカレー
トする一方だ。
 
 保護者はこれを「期待値」とみなし、実際派手なマニュフェストの学校に
大勢の応募者があったりする。だから学校はマニュフェストを掲げざるをえ
ないという循環に入っているのが目下の状況である。
 
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┃私┃などは長年大学受験のデータを扱ってきたから、「国公立・早慶上智
┗━┛50%、GIMARCH100%の進学率」はありえないことがわか
っている。が、保護者は単純に「目標は高ければ高いほどいい」と考えてい
るようだ。
 
 が、きちんと見てほしいのは、期待する数字そのものではなく(数字は先
にも言ったようにいくらでも作れる)、それを達成するために、どのような
取り組みを学校が考え、用意しているかだ。このことまでしっかり見て選ん
でほしい。
 
 もうひとつ大切なことは、生徒の実態に合っているかどうかということ。
ハードなカリキュラム、レベルの高い教材を並べるこ
とは机上プランでいくらでも可能だ。いくら立派なも      ,−−、
のでも、「画に描いた餅」では意味がない。わが子の    /      \
学力も客観的に見つめながらこうしたマニュフェスト   V・  ・V
を見ていただきたいものである。             ω人=♀=ノω 
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(2008年6月10日配信)
 
 

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 ∩   《連載/第41回》
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 l⊃ノ  ┃中┃学┃受┃験┃┃安┃┃田┃┃の┃┃目┃ ◎安田教育研究所    
/ /   ┗━┻━┻━┻━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛  代表 安田 理
  
  宗教上の理由から、日曜日の入試を避ける学校があります。来年は、ち
ょうど2月1日が日曜日。世に言うところの「サンデーショック」です。が、
ピンチはチャンスで、この「変化」については、捉え方次第では「プラス」
にも「チャンス」にも変えることができる……というお話です。
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    ■「サンデーショック」は「サンデーチャンス」と捉えよう
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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┃2┃月1日が日曜日に当たる来年は、2月1日に入試を行っていたプロテ
┗━┛スタント校の多くが入試日を2日に移動させるため、例年とはまった
く異なる入試状況になる。そのため、女子校を中心に、入試日程をどうする
か、合格発表数をどうするか……など、苦慮する学校が多数生まれる。その
ことを称して「サンデーショック」といってきた。一部では「ミッションシ
ョック」という言い方もされる。
 
 が、このことは学校にとっては「ショック」でも、受験生にとっては例年
だと併願できなかった学校が併願できるので(桜蔭―女子学院、雙葉―フェ
リス女学院といったパターン)、「チャンス」ということがいえる。だから
受験生サイドは「サンデーショック」でなく「サンデーチャンス」と捉えよ
う。
 
 この3月に3大受験情報誌の編集長が集まった安田教育研究所のセミナー
でも「サンデーチャンス」という表現が共感を得ていたので、今後は業界で
も「サンデーチャンス」が市民権を得るのではないだろうか。
 
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┃プ┃ロテスタント校はみな動くと思っている方が多いが、プロテスタント
┗━┛(主義)の学校でも、聖学院(同じ学校法人の女子聖学院は動く)、
鴎友学園女子、香蘭女学校(同じ宗派の立教女学院は動く)、頌栄女子学院、
普連土学園、桜美林、玉川学園、アレセイア湘南は動かない方向と、プロテ
スタント校が必ず動くというわけではない。このほかの啓明学園、関東学院、
関東学院六浦、横須賀学院などは原稿段階では未定。
 
 一方、横浜雙葉はカトリック校なので動かす必然性はないのだが、フェリ
ス女学院と併願する受験生が増えることを嫌って、2日に動く。現段階では
未定だが、同じくカトリックの清泉女学院も従来どおりだと2日に動く。
 
 逆に鎌倉女学院、湘南白百合学園が1日に動くのは、フェリス女学院、横
浜雙葉、横浜共立学園、捜真女学校と4校も2日に入ってくるため2日のま
まだと競合して高い学力の生徒を取れなくなるためである。
 
 このように、単に宗教的な事情だけでなく、学力の高い生徒を取るという
入試事情から動くわけである。このほかにも無宗教の2日校が幾つも1日に
も参入するのは、学校が増える2日では学力の高い生
徒を大勢取ることは難しいからに他ならない。
                                ,−−、
 このように2009年入試は2008年入試とは異なる状況     /      \
になる。秋以降各校の動向をよく読んで判断していた   V・  ・V
だきたい。                       ω人=♀=ノω  
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(2008年5月10日配信)
 
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