教育春秋
「将来日本人を雇用するときのためです」
 私は実は大学時代、第一外国語として「中国語」を履修していた。「西域」(そういえば最近こうした言い方はしないな)の研究をするつもりであったからである。1、2年次は10数名の少人数クラスだったせいもあり、結構真面目に取り組んだ。ところが、文化大革命が勃発、いっぺんに中国語熱が冷めてしまった。当時、クラスの中には「毛沢東語録」を振りかざす者が多数いたものだ。
 中国語熱が冷めると同時に関心も、「西域」から東南アジアに転換。
 高校時代の「60年安保」もそうだが、私の学生時代は常に政治によってねじ曲げられている。正確には自分で勝手に転換しているだけだが……。

 今回の尖閣諸島の件ですぐ頭に浮かんだことは、中国語を履修している学生のモチベーションである。私同様、中国語を学ぶ気が一気に低下したのではないか、ということだ。それとも今の学生は、将来就職やビジネス上で有利になることを考慮して、冷静に学んでいるのだろうか。

 最近中国から帰ってきた人がから聞いたのだが、日本語を学んでいる中国の学生に、その人が「なぜ日本語を勉強しているのですか?」と聞いたところ、返ってきた答えはこうだった。
 「将来日本人を雇用するときのためです」

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「安田研通信」2010年9月下旬号

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